◆所蔵品から◆資料ナンバー10136 「新東亜資源開発解説地図」の話
資料班



切符・急行券

切符・急行券 表

切符・急行券

切符・急行券 裏

 先月、2025年1月25日に、寄贈品展のトークイベントを行いました。その中で、南満州鉄道(「満鉄」)と朝鮮総督府鉄道についての解説がありました。
 関連のあるご寄贈品は、昭和20年(1945年)8月12日・14日・15日の日付の入った切符と急行券です。
 裏面には「事故返し」と書かれています。乗車途中で列車が止まった時に後の列車に乗れるようにする措置の事です。

「新東亜資源開発解説地図」

「新東亜資源開発解説地図」

 この図は、券面に出てくる地名と、線路を地図の画像に重ねたものです。
 イベントでは、会場の画面に映し、参加者にプリントで配りました。

切符

切符

 切符を、より詳しく見てみます。
「清津より」
「奉天ゆき」
「経由(京元・京義・安奉)」
「通用発売日共15日 2等」
「164円50銭(税共)」または「82円25銭(税共)」
 赤い「小」の字が付いている切符は、半額になっています。1945年には消費税はありません。「税共」の「税」は、通行税です。
 3行目の「経由」に注目すると、この切符で、どの線に乗って、東の海岸の清津から内陸の奉天ヘ向かったのかがわかります。
 (実際には「事故返し」が発生して、乗車券が手元に残っていたことから、途中までしか移動ができなかったと思われます。)

「新東亜資源開発解説地図」

「新東亜資源開発解説地図」に、鉄道の路線を書き込んだもの

 清津からは、■■咸鏡線
 元山から■■京元線
 京城から国境の新義州まで■■京義線
 安東から奉天まで■■安奉線
 となります。最初に乗る咸鏡線は、切符には書かれていません。

「新東亜資源開発解説地図」

「新東亜資源開発解説地図」

 書き込みを外して地図を見てみると、いろいろな動物が描かれています。
 中央左寄りにはツルとトラが描かれています。
 「ツル 飛来地」で検索してみると、ツルのイラストがあるあたりは、現在でもツルの通り道になっているようです。
 トラは、現在では生息域がかなり狭くなっているようです。
 南の方にはハリネズミらしき動物。さらに南にはシカがいます。「獐」という字が添えられています。シカの仲間の「ノロジカ」です。
 左の小さい半島(遼東半島)には、羽を広げた虫の絵があります。「柞蚕」(サクサン)という、カイコの仲間です。(話がそれますが、「柞蚕」で検索した時、羽に目玉のような模様のあるガ(蛾)がいきなり表示されて、びっくりしました。)
 農作物は、「大豆」のイラストが多いです。ハリネズミ?とシカの間には「人参」があります。薬用の、高麗人参のようです。

「新東亜資源開発解説地図」

「新東亜資源開発解説地図」

 もとになった地図は「新東亜資源開発解説地図 東京日日新聞社調査編集」昭和14年(1939年)1月発行です。この画面で見える所では、緑色のエリアが「ソヴィエット連邦」で、中央に「バイカル湖」が見えます。黄色は「外蒙古」です。
 中央あたりに、そりを引いたトナカイが描かれています。漢字で「馴鹿」と書かれています。「外蒙古」の赤い旗のそばの街は「ウランバートル 庫倫」です。白い羊もいます。

「新東亜資源開発解説地図」

 奉天よりも西の、内陸部です。緯度と経度の線が入っているのがご覧いただけるでしょうか。中央より上の横線は北緯44度の線です。北海道の網走と同じくらいの緯度です。
 農作物に「高粱」が出てきました。コーリャンという穀物です。この図の右隣(東)には麦のイラストもあります。赤い花は、「けし」です。
 南の方、承徳という街のそばには玉蜀黍(トウモロコシ)があります。近くに万里の長城が描かれています。壁を越えると北京はすぐ近くです。
 紫のエリア「察哈爾省」には、白い家畜の群れを連れた人の絵と「放牧」という文字があります。(察哈爾はチャハルと読むようです)

「新東亜資源開発解説地図」

「新東亜資源開発解説地図」

 台湾や香港の周辺です。台湾の動物は水牛と「穿山甲」(センザンコウ)とブタです。バナナの絵もあります。オレンジ色のエリアは「福建省」、農作物は「茶」と「煙草」。お茶の木のイラストが3か所もあります。福建省といえば烏龍(ウーロン)茶のイメージがあるので、なるほど、と思いました。南の広東省には、「落花生」があります。

「新東亜資源開発解説地図」

「新東亜資源開発解説地図」

 地図の西の端です。東経80度・84度・88度のラインが入っています。中央を通る横線が北緯28度です。紫は「西蔵」(チベット)、黄色は「ネパール」、オレンジ色は「印度」(インド)です。右端に少しだけ見えている緑色は「ブータン」です。
 「西蔵」には、ラクダとヤク、ジャコウジカの絵もあります。ネパールは、ハゲタカとセンザンコウとサイ。独特な形の旗も描かれています。
 インドは、ハゲタカと「猩々」とヤマアラシとワニとゾウとコブラ。画面外にはトラもいます。「猩々」は、猿(類人猿?)のイラストです。
 タージマハルらしき建物のイラストのそばには、漢字で「白玉殿」と書かれています。

切符拡大

切符拡大

 最後に、切符の地模様をご覧いただきます。「てうせんそうとくふ」(朝鮮総督府)という文字がご覧いただけるでしょうか。
 (読みやすくなるように写真の色合いを調整しています)

<終了> 第12回寄贈品展 知ってほしい 戦争の時代 
2月22日(土)で終了しました。ご来館、ご観覧くださった皆様にお礼申し上げます。





詳しい画像はこちらからどうぞ。
https://peace-aichi.com/pdf/20250222_shigenkaihatsu.pdf

ピースあいちウェブサイトの、所蔵品の紹介のページからも、バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
https://peace-aichi.com/objects/