戦争体験の書き起こしを行って

ボランティア  田中 玲子





 私は、「戦後75年プロジェクト」の語り継ぎ手の研修を受けて、ピースあいち語り継ぎの会(リボン)で戦争の語り継ぎをしています。
 私の父は14歳の時、空襲で自分の母親と妹を失ったのですが、家族にその事を話すことはほとんどありませんでした。『お父さんは、戦争をどのように考えていたのだろう?』という思いが、語り継ぎ手になる動機でした。
 その後、語り継ぎ手として活動するとともに、ピースあいちに撮りためた戦争体験の語り手のDVDの書き起こしをしています。

 

 DVDを書き起こすには、映像を見ながら、AIが文字にした文章を確認、修正していきます。AIは普通に話す人の文章化が苦手なようで、名古屋弁も理解できませんし、何とも妙な文を修正することになります。
 また、人はそれぞれに話し方の癖があり、最初に“あの”が付いたり、最後に〝ね〟が付いたり、言葉を言い換えたり、長く文章が続いたりもします。
 自分が納得できる文にするには何度も繰り返して聞き、文字にする時間が要ります。そして、何度も聞いているうちに、時代の空気感が分かり、その光景が浮かんでくるような気がします。戦争体験は、何度も思い返した自分の中の映像を元に話されるのだと思います。

 

 最初にDVDを見た時は分かりにくいと思う場合もありますが、その人の表情、声、会場の反応を感じながら作業を繰り返すと、「そういうことか!」と腑に落ちる瞬間があります。
 私は父から話は聞けませんでしたが、書き起こしを通じ、戦争の時代を生きるとはどういうことなのかを教えてもらっていると感じます。戦争体験の語り手が考え続けてきたように、私は何度も繰り返し聞いて文章にすることで、『戦争とは何か?』を自分のものとし、その方たちの体験を語り継いでいきたいと考えています。