◆所蔵品から◆資料ナンバー1287 「飛行少年 1944年7月号」の話
資料班
「マンガと戦争」 展示風景
飛行少年 1944年7月号(上の本)
7月23日からピースあいちでは新しい特別展「マンガと戦争」が始まりました。
「原爆」「特攻」「満洲」「沖縄」の4つのコーナーで、それぞれ4作品ずつ漫画を紹介しています。京都国際漫画ミュージアムからお借りした実物のマンガ本も展示されます。
展示されているたくさんの本の中には、マンガ以外の本も含まれています。たとえば「特攻」のコーナーに展示されている雑誌「飛行少年 1943年8月号」。
キャプション(説明書き)にはこう書かれています。「戦時中の少年向け雑誌。戦闘機の詳細情報だけでなく、航空隊員養成所の写真グラビアや模型飛行機コンテストも。」
飛行少年 1944年7月号
実は、ピースあいちの資料の中にも「飛行少年」の別の号があります。
今月は、ピースあいちの所蔵品の、「飛行少年 1944年7月号」を見てみましょう。 発行所は、財団法人 大日本飛行協会です。
飛行少年 1944年7月号
巻頭のカラーページはドイツ軍超大型輸送機「ギガント」。「正しくはメッサーシュミットMe-323」です。エンジンは6基あって、150人を運ぶことが出来ると書いてあります。正面のところが観音開きに左右に開いて大きな物もそのまま積み込めるのだそうです。隣のブルーの文字のページは、「艦上機の翼折りたたみ型式」。船(母艦)で運ばれる飛行機は収納のために翼が折りたたみになっている、という説明です。
飛行少年 1944年7月号
グラビアページには、展示キャプションにもあった通り、訓練生たちの写真があります。「米英撃滅“雛わし”総進軍」というタイトルです。
飛行兵が「XX鷲」と呼ばれるのはいろいろ見たことがあります。荒鷲、若鷲、海鷲など。学徒の飛行兵が「学鷲」と呼ばれているのも読んだことがあります。
少年飛行兵や訓練生は「雛わし」と呼ばれていたようです。「わし」が、ひらがなになっている点が、「子供に向けたメッセージ」らしいと思いました。
飛行少年 1944年7月号
特集は、「偵察機の話」。偵察機の仕事の大事さを説明しています。
最初のページの絵は、騎馬兵と海の上の船。飛行機が登場する前の偵察は、陸なら騎馬兵、海なら巡洋艦(フットワークの良い船)でした、という説明です。
次の見開きには、航空写真の撮り方(右ページ)と、潜水艦に格納されている飛行機は丸い形に畳まれているという図(左上)が載っています。
飛行少年 1944年7月号
「航空戦に役だつもの」と「飛行機の構造 翼小骨」のページです。
「航空戦に役だつもの」は、飛行機乗りが何を操縦席に持ち込むのか、という話かと思ったらそうではなくて、身近な物資が戦争のためにどのように使われるか、という解説でした。(だから、不足していても文句を言わずに耐えるように、というような話が続きます。)
たとえば、砂糖から燃料が、塩(食塩)から化学兵器が、牛乳から木製飛行機の接着剤が、ブドウの成分の酒石酸から薬品が作られるそうです。
「飛行機の構造 翼小骨」
本文を見ると、「小骨」は、「こぼね」と読むのがわかります。前回の「飛行機の構造」は「桁(けた)」についての話だったと書かれています。右のページの上段の図は割りばしみたいな棒が2本描かれていますが、これが桁です。桁に小骨というパーツを並べて取り付けると、翼の立体的な形ができます(右ページ2段目の図)。軽く丈夫にするために、桁の断面を「エ」「C」のような形にしたり、板状の小骨に丸い穴をあけたりする、という解説が続きます。
航空少年 1943年8月号
もう1冊、今度は「飛行少年」ではなく「航空少年」1943年8月号です。発行元は誠文堂新光社です。
航空少年 1943年8月号
目次と、「敵イギリスの高速度木製練習機 マイルス“マスター”1型」の図をご覧いただきます。この飛行機は2人乗りで、エンジンはロールス・ロイス製です。
航空少年 1943年8月号
他のページも駆け足で見てみましょう。グラビアの写真は少年飛行兵たちが飛行機の整備や地上での操縦訓練をする様子です。
「ドイツの航空少年とグライダー」という読み物もあります。
航空少年 1943年8月号
最後にご紹介するのは、模型飛行機の作り方のページと、「第8回模型工作品展覧会」の作品募集のページです。
詳しい画像はこちらからどうぞ。
https://peace-aichi.com/pdf/20240723hikoukoukuu.pdf
ピースあいちウェブサイトの、所蔵品の紹介のページからも、バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
https://peace-aichi.com/objects/