◆所蔵品から◆資料ナンバー705その他 まんが「決戦兄弟」 の話
資料班



「決戦兄弟」

「決戦兄弟」

 今月ご紹介したいのは、内閣の情報局編集のグラフ誌「写真週報」に連載されたまんが「決戦兄弟」です。
 だいぶ前の事になりますが、2008~2009年の所蔵品展で展示したこともあります。もしかしたら見たことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 第1回は昭和19年(1944年)1月5日号に乗っています。タイトルの下に「横山隆一画 人物紹介の巻」と書かれています。空野家のメンバーは、父-突兵衛 長男-新兵 次男-健兵 三男-傘兵 四男-雲兵 母-虹子 姉-雷子です。80年前だと、年齢の順ではなくて、お母さんとお姉ちゃんは順番が後ろになります。

写真週報「照準器」

写真週報「照準器」の「決戦兄弟」4

 「決戦兄弟」は写真週報の巻末近くの「照準器」というページに載っています。「決戦兄弟」のほかはコメント付きのイラストです。1コマ漫画みたいですけど、枠線がないので「1コマ」とは言わないかもしれない。
 右のページの「決戦兄弟」は第4回。お兄ちゃんの「新兵」が父を飛行機にのせています。宙返り飛行でお父さんの「ベントウガ ニゲダシタ」場面が描かれています。

「決戦兄弟」 「決戦兄弟」

「決戦兄弟」10・17

 2番目の健兵も召集され、父親に報告します。健兵・父・姉の雷子の3人は、同じ工場で飛行機を作っていました。
 3人して同じ場所に「ヒマ」(油の原料となる植物)の種をまいていた、というお話です。
 もうひとつは、戦地の新兵(お兄ちゃん)に面会人があり、だれかと思ったら弟の健兵だった、という話です。
 最後のコマの背景の方でふたりは相撲(すもう)をしています。「モンデ ヤル」「ハッ」というふたりのせりふが、親しさが伝わってきて面白いです。

「決戦兄弟」 「決戦兄弟」

「決戦兄弟」19・39

 空襲・防空に関係するものをご覧いただきます。最初は火の見やぐらのような見張り台の上から指示を出すお父さん。警報解除(ケイハウカイジョ)と言われても気づきません。
 下は空襲を受け、家の中から煙と火花が出ている筒を持って出てきたお父さん。水?をかけてもらって火が消えた、というお話です。火の中に飛び込むふたりはバケツと鳶口(とびぐち:家をこわして延焼を防ぐ道具)を持っています。防空頭巾にヘルメットをかぶり、足もとはゲートル、手には手袋をしています。

「決戦兄弟」 「決戦兄弟」

「決戦兄弟」12・22

 弟たちが活躍する回です。
 第12回(上の漫画)の前半は、工場は休みかと何度も聞かれたお父さんが、「休電日ナリ」と書いた板を体につけて歩くというお話、後半は釣りをするお父さんの横で子どもたちが食べられる草を集めるというお話です。
 下の第22回では、子どもたちは疎開へ行くことになります。お父さんがいろいろ言い聞かせているのですが、途中から立場が入れ替わり、子どもたちがお父さんにあれこれ言いはじめます。

「決戦兄弟」 「決戦兄弟」

「決戦兄弟」28・31

 戦地の健兵のところにいろいろと家族のニュースが入ります。
 兄は「奇跡の生還」、弟ふたりは「陸軍少年飛行兵学校に入学」、雷子は「新聞社の飛行家」と結婚。今日は家族のために乾杯、と、にこにこする健兵に、「オサケノ加給ハ当分見込ミアリマセン」という残念な報告。
 雷子の夫、成層圏太郎が新兵に会いに来ました。お父さんから時計を預かっているといいます。新兵は、父の形見の時計があるから必要ないというのですが、その形見の時計はプラチナ製なので回収に出したいから取り替えてほしい、という事情でした。

「決戦兄弟」 「決戦兄弟」

「決戦兄弟」24・26

 最後に、謎の同居人伊呂波(イロハ)氏が出てくるもの。
 子どもたちと母は疎開して、ひとり暮らしになったお父さんのところに一時帰国した新兵が立ち寄ります。同じように家にひとりになったイロハさん、チリヌさん、ホヘトさんが「居候」していました。お父さんと新兵をまじえて男性5人での食事に「まるで前線ですね」という新兵。
 もうひとつの漫画でも、イロハさんが食事を作っています。「コレハ ウマイ」と言いながら作っています。食べながら「イクラ クッテモ タダデスカラネ」といわれて「ギョッ」とするほかの3人。材料は何かときいてもイロハ氏は「イケマセン」と教えてくれません。

 「決戦兄弟」は、昭和19年(1944年)の終わりまで、写真週報で連載されました。
 空襲や疎開、金属回収など、昭和19年に起こっていたことがさまざまな形で漫画の中に表現されています。


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https://peace-aichi.com/pdf/20230223_kessenbrothers.pdf

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