◆所蔵品から◆資料ナンバー9769 中学化学教科書 の話
資料班
中学化学教科書 表紙
今月は、「中学化学教科書」をご紹介します。
開催中の「第10回寄贈品展 つなげていこう平和への願い」(2023年2月25日まで)で展示している資料です。
昭和6年(1931年)印刷・発行、昭和10年(1935年)訂正第4版発行です。
中学の教科書ですが、いわゆる旧制中学、今だと高校で使うような教科書です。
中学化学教科書 奥付
巻末の奥付(おくづけ)です。左から右の横書きになっています。
中学化学教科書 本文・写真
教科書の中身をご覧いただきます。炭素の性質の項目でガスマスクのイラスト。活性炭がガスマスクのフィルターに使われているという説明です。
「戦時におけるガスマスクの利用」という写真ページもご覧いただきます。
中学化学教科書 本文・写真
もうひとつ、「鉄の用途」というページ。高射砲や軍艦が紹介されています。
中学化学教科書 表紙 イラスト部分
ところで、表紙のイラストは何なのだろうか。長い廊下のある建物の端に八角形のタワー、みたいになっています。上の階(?)から続きの番号がついています。数字と重ねてアルファベットが書いてあるのもご覧いただけるでしょうか。
これは、元素の周期表の模式図です。現在よく見る元素周期表は、左右にタワーがあって廊下でつながっているような形だと思います。この立体を「1」と「2」の間で縦に切り離して左右に広げれば見たことのある形になりそうです。
いちばん下、左端に近いところの87番には、アルファベットがつけられていません。ここに入るフランシウム(Fr)はたいへん不安定な元素で、1935年にはまだ発見されていませんでした。
43番と61番には、今とは違う記号が入っています。43番にはMA、(今はTc-テクネチウム)、61番にはIl(今はPr-プロメチウム)と書かれています。(Ilは、大文字のIと小文字のLです。)
中学化学教科書 周期表
巻頭の、周期表のページです。縦横に区切られた四角の中に元素が並んでいます。
中学化学教科書 周期表 部分
下のほうを拡大してみます。43番元素には、「マスリウム」という名前がついています。
61番は、上から2段目の左から4番目の枠に「58~71稀土類(きどるい)(または希土類)元素」とだけ書かれています。今だと、57番ランタンLaを含めて「ランタノイド」と呼ばれます。さっきの8角形タワーの模式図に戻ると、下のほうでいきなり手前に棒状に飛び出している部分が「ランタノイド」です。
キュリー夫妻が発見したポロニウム(84番)とラジウム(88番)も中段と下段に入っています。
1935年の教科書で、いちばん原子番号が大きい元素は92番の「U」(ウラン)でした。
1898年に発見された84番ポロニウムと88番ラジウムは、どちらも放射性元素です。1935年より後に合成、発見されることになる43番テクネチウム、61番プロメチウム、87番フランシウムも放射性元素です。当時の周期表の最後の元素、92番ウランも、もちろん放射性元素です。
20世紀に入ったあたりから放射性元素や原子力エネルギーの研究がすすみ、新発見も多かった時代なのではないかと思います。
ウランを使った原子爆弾が戦争で使われたのが、この教科書が出てから10年後の1945年でした。
《ご案内》 ピースあいち3階展示室では、寄贈品展が開催中です。
寄贈品展のお知らせ
ピースあいち第10回寄贈品展 つなげていこう平和への願い
開催中 2023年2月25日(土)まで
開館時間 11:00~16:00 最終日は15:00まで
休館 日曜日、月曜日
詳しい画像はこちらからどうぞ。
https://peace-aichi.com/pdf/20230121_chuugakuchemistry.pdf
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