◆所蔵品から◆資料ナンバー9985 「国民防空読本」の話
資料班
「国民防空読本」
今月ご紹介するのは、「国民防空読本」です。昭和14年、1939年の発行です。
空襲に備えて、知っておくべきこと、しなければいけないことなどを詳しく解説しています。
紫色の印刷に時代を感じる紙の色。なんか見たことある、というかたもいらっしゃるでしょうか。実はこれ、先々月の154号(2022年9月25日号)でご紹介した「戦時下べし・べからず番付」の裏面です。
横幅約39㎝、縦は約54㎝と、大きさは新聞の1面ぐらいです。
「国民防空読本」
タイトルの下には「護れ大空! 銃後の務め!」という標語。「つとめ」の漢字が遠目だと「努」に見えるのですが、近くで見ると、「矛」の部分のおさまり方が独特な「務」の字です。
標語の下のイラストは、ヘルメットにガスマスク、サーチライトに飛行機のシルエットと要素が盛りだくさんです。
この「読本」の発行された1939年に使われていたガスマスクは、目の部分が左右で分かれています。フィルターはかなり大きく、首から下げた袋に入っていて、じゃばらのホースでつながっています。1941・42年のガスマスクは、目の所は左右つながった形で、フィルターがマスク本体の口元についています。
「国民防空読本」
前書きのタイトルは「空に国境なし」。爆撃機は海を越えて飛んでくるので、「戦線も銃後もない」、「婦人子供に至るまで前線の将士と同じ活躍をしなけらばならない」と書かれています。
「国民防空読本」
解説は「爆撃機の脅威」から始まります。
飛行機の写真とともに、「一機数噸(トン)の爆弾を乗せてくる」飛行機が、「たとえ2機でも3機でも市街の上空へ入ってきたら大変なことになる」という解説が入ります。
「国民防空読本」
次に爆弾の種類。
「一、人馬殺傷用破片爆弾」(炸裂にともなう破片に殺傷力がある)
「二、破壊用爆弾」(鉄板なら10センチ、ベトン(コンクリート)壁なら3メートルの厚みに穴があく。建物の屋上から地下室まで貫通する)
に続くのは、「三、毒ガス弾」と「四、焼夷弾」です。焼夷弾については、「これは火事の卵である」と、わかりやすい説明がついています。
毒ガスの最初の2種類、イペリット(マスタードガス)とルイサイトは「糜爛(びらん)性」と解説があります。細かいことですが、「び」の漢字が「糜」(下が米)でなく「靡」(下が非)になっています。「なびく」と読む漢字ですが、「糜」(下が米)と同じく「ただれる」の意味もあるみたいです。
もうひとつ、「五、細菌弾」の項目があります。
(現在は、化学兵器禁止条約、クラスター爆弾禁止条約、生物兵器禁止条約があり、これらのうちのいくつかは使用が禁止されています。)
「国民防空読本」
次のコーナーは、「防空の方法」です。聴音機、照空灯による監視と、高射砲による撃墜について書かれています。
照空灯(サーチライト)・高射砲の写真と、聴音機についての解説をご覧いただきます。聴音機は、ラッパみたいな集音機だけでなく、測定機や計算機、操縦機がついていて、ラッパ部分の形もいろいろとあるのだそうです。
「国民防空読本」
「防空の方法」のもうひとつは灯火管制について。
「一切の活動を中止して、闇の中にじっとしていたのでは、肝心の戦争の継続が出来ない」と書いてあります。空から爆弾が降ってくるかもしれない時も、普段と変わらず工場で働かないといけなかったようです。
「国民防空読本」
「防毒」の項目です。空襲による毒ガスへの対策について、スペースをかなり多く使って説明しています。
防毒マスクや防毒室を用意するのは、以前この「所蔵品から」で紹介した「防空図解」にも書かれていましたが、食べ物(糧食)は「密閉包装するが安全」というのは見たことがないように思います。食べ物が毒ガスにふれないように、ということですね。
「国民防空読本」
最後の「結び」をご紹介します。
「恐るべきは空襲である。しかし相当の用意さえ怠らなければ、さして悲惨な目に逢わずとも済む」
「爆弾そのものの被害より無秩序、無統制に陥り、流言蜚語に迷わされて混乱度なく、狼狽を極めるほうがよほど被害が大きい」
前もって準備して、きちんと対応すれば大丈夫だ、という言葉で結ばれています。
寄贈品展のお知らせ
ピースあいち第10回寄贈品展 つなげていこう平和への願い
会期:2022年12月6日(火)~2023年2月25日(土)
休館:日曜日、月曜日、年末年始2022年12月24日(土)~2023年1月4日(水)
詳しい画像はこちらからどうぞ。
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