◆所蔵品から◆資料ナンバー9985 「戦時下『べし・べからず』番附」の話
資料班
戦時下「べし・べからず」番附
2022年夏の「戦争プロパガンダ」展の準備中に寄贈いただいた資料です。企画展で展示はできなかったのですが、ここでご紹介したいと思います。
「戦時下『べし・べからず』番附」というタイトルです。大相撲の番付表のスタイルで、「べし」(しなければいけない事)と「べからず」(してはいけない事)を書き並べています。
中央のいちばん下には、「勧進元 奇譚社」と書かれていて、これが発行元でしょうか。枠の外に細かい字で「奇譚 第一巻第八号附録 (中略) 昭和十四年八月一日発行」と書かれています(昭和14年は1939年です)。「奇譚」という雑誌の付録だったようです。
中央には大きく「蒙御免」(ごめんこうむる)と書かれています。これはお相撲の番付でも同じです。
その下、お相撲の番付だと行司(ぎょうじ)の名前が書かれるところには、「五倫」「五戒」「西郷隆盛の遺訓(抄)」が書かれています。「五倫」は儒教の、「五戒」は仏教の教えから来ています。
戦時下「べし・べからず」番附
番付の右側が「東」「べし集」、左側が「西」「べからず集」です。ランキング上位のところを見てみましょう。
「いかにも」な項目が並んでいます。国を敬え、戦いでは油断するな、貯金して納税して金(きん)を献納せよ。で、生めよふやせよ。
戦時下「べし・べからず」番附
その次の欄です。こういうのって、下の方の、数を出すためにがんばって考えたのかな、というあたりを見るのが面白いのではないかと思います。
でも2段目ではまだまだもっともらしい事しか出てこない。
「べからず」の方の、「流言蜚語すべからず」「買い溜めすべからず」のあたりは、感染症が広がった現代でも響く言葉だと思います。
「歓送迎華美にわたるべからず」というのもあります。「応召の送り迎えに」とあるので、兵士の出征、帰還のときの「お祝い」の事ですね。「泥酔やお祭り騒ぎは禁物」だそうです。
戦時下「べし・べからず」番附
さらに下の欄です。一番上の筆の文字は、「同」を略したものです。
歓送迎つながりでいうと、ここでは「二次会廃すべし」があります。「早く帰って明日に備えよ」だって。
次の「物言わぬ戦士愛すべし」は、説明に「馬も犬も鳩でさえも国につくす」とあるので、「物言わぬ戦士」は、戦争に使われる動物たちのことです。
戦時下「べし・べからず」番附
いちばん下の欄です。間食するなとか、暴飲暴食するなとか、小学生の夏休みの注意事項みたいなのも出てきます。別の欄では、「夜更かしすべからず」、「早起きすべし」もあります。
最後は「投票棄権すべからず」。文面だけ見れば、それはその通り、という内容で終わります。
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