◆所蔵品から◆資料ナンバー6237 「帝国在郷軍人会」選挙ポスターの話
資料班



企画展「戦争プロパガンダ~国民を戦争に向かわせた宣伝たち」展示風景

企画展 所蔵品コーナー展示風景

 7月12日から、新しい企画展「戦争プロパガンダ~国民を戦争に向かわせた宣伝たち」が始まりました。
 ピースあいちの所蔵品のコーナーもあります。そこに展示されている資料の中から、今月はご紹介します。このあいだ選挙(参議院議員選挙 2022年7月10日)がありましたので、選挙のポスターです。

「帝国在郷軍人会」選挙ポスター

「帝国在郷軍人会」選挙ポスター

 「郷軍先駆至誠一票」「天業翼賛此の一票」「使うは一票係るは一国」というリード文を見つつ、この時(昭和17年、1942年)の選挙は今とどう違うのかというお話をしたいと思います。
 以前、1946年の戦後すぐの選挙について「所蔵品から」で取り上げたことがあります。女性が投票(立候補も)できる初めての選挙でした。
 このポスターの時の選挙で投票が出来たのは25歳以上の男性の国民(当時の言い方だと「臣民」)です。
 納税額いくら以上という制限はありませんでした。
 1942年当時の国会は、二院制ではあるのですが衆議院と貴族院。貴族院の方は選挙がありませんでした。このポスターが使われたのは衆議院の選挙です。

 「郷軍先駆至誠一票」の「郷軍」は在郷軍人でしょうか。戦地に行っていない、地元にいる軍人に対し、先駆けて投票しましょうと呼びかけています。
 ポスターの最後も青い文字で「一剣錆びず一票曇らず」「断じてけがすな国土と選挙」「燃ゆる愛国選挙で示せ」と、かっこよく締めくくられています。
 「一票曇らず」「断じてけがすな」というのに関連するのですが、途中にこんな文があります。「若(も)し選挙が腐敗し邪道に陥(おちい)ったとせば之(これ)に依(よ)って選出された議員も亦(また)腐敗し邪道に陥ることは理の当然である。」選挙が腐敗していたら選ばれた議員も腐敗する。すごくまともというか良いことを言っています。
 この選挙で大政翼賛会の1党独占が完成して、もう戦争終わるまで選挙はないという、ターニングポイントの選挙なのですが、公正を呼びかける部分だけ見たら、ものすごく真っ当にも見えます。

「帝国在郷軍人会」選挙ポスター

「帝国在郷軍人会」選挙ポスター

 ここからは、本文の中の古い漢字や読みが難しい漢字を、いくつか取り上げてみます。
 右の画像の中では、古い漢字は、
 選擧→選挙 議會→議会 當然→当然 圖る→図る
 読みにくい漢字は「之を」 「愈々」 「臣民」 「以て」
 なかなかスムーズには読めないですよね。

「帝国在郷軍人会」選挙ポスター

「帝国在郷軍人会」選挙ポスター

 先ほどの漢字の読み方は「これを」「いよいよ」「しんみん」「もって」です。
 この画像(→)の旧漢字は、
國民→国民 發足→発足。
 読みにくい漢字は「苟も」 「而して」 「須らく」 「即ち」 「通暁」 「已まない」 「起て!!」。読み方は下の段落でご紹介します。

「帝国在郷軍人会」選挙ポスター

「帝国在郷軍人会」選挙ポスター

 読み方は「いやしくも」「しかして」「すべからく」「すなわち」「つうぎょう」「やまない」「たて!!」です。
 次の読めなさそうな漢字はこちら。
「惡み」 「洵に」 「廣く」 「宇内」 「難き」。前後の文脈から考えるとわりと読めます。ふりがながついているものもあります。

 「にくみ」「まことに」「ひろく(=広く)」「うだい」「かたき」です。
 宇内(うだい)というのは世界中というような意味です。「宇」の文字は「宇宙」で使いますが、「八紘一宇」の「宇」でもあります。ここでは家とか屋根とかの意味で、八紘(8つの方角すべて、世界中)を一つの家に、という意味になります。ピースあいちで企画展「戦争プロパガンダ~国民を戦争に向かわせた宣伝たち」を見ていただくと、いくつかの場所で「八紘一宇」の文字を見つけられると思います。


詳しい画像はこちらからどうぞ。
https://peace-aichi.com/pdf/20220722_senkyo1942.pdf

ピースあいちウェブサイトの、所蔵品の紹介のページからも、バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
https://peace-aichi.com/objects/