◆所蔵品から◆資料ナンバー8976 雑誌「画報躍進之日本」 1941年12月号 の話
資料班



画報躍進之日本 1941年12月号

画報躍進之日本 1941年12月号 表紙 裏表紙

 今月ご紹介するのは「画報躍進之日本」 昭和16年(1941年)12月号です。夏の企画展「戦争プロパガンダ―国民を戦争に向かわせた宣伝たち」に関連する資料を探していて見つけました。
 

画報躍進之日本 1941年12月号 画報躍進之日本 1941年12月号

画報躍進之日本 1941年12月号

 目次の一部をご覧いただきます。
 1941年12月1日発行なので12月8日の真珠湾攻撃の直前です。
 「電撃組閣完了、東條新内閣成立す」という項目があります。

画報躍進之日本 1941年12月号

画報躍進之日本 1941年12月号

 アメリカに関する記事は、「アメリカ合衆国の資源と膨張」と、「宣伝倒れの米陸軍、歴たる軍紀の弛緩」があります。
 「宣伝倒れの米陸軍、歴たる軍紀の弛緩」のページをご覧いただきます。
 連隊長の平均年齢は60代、学校を卒業したばかりの少尉が大佐、中佐の任務を受け持たされ、中堅層がいない。訓練不足と、兵士の態度が不真面目なことが原因で演習中の死傷者が多い…、と書かれています。
 国民に知られないように「言論機関に対し箝口令を発し事実上の検閲を行っている」ことも書かれています。
 装備に関しても「戦車の如きは前大戦時の旧式なもの」という評価です。
 しかし写真についている説明は少し様子が違って、「猛烈な訓練を開始」「75ミリ、35ミリの戦車砲は同時に高射砲ともなる精巧なもの」など、あまりひどいことは書かれていません。
 左下の飛行機が水につっこんでいる写真、写真だけ見ると「お粗末」と思ってしまいそうになるのですが、説明を読むと、飛行機の車輪が破損したときに空港上空を何十周もしてガソリンを消費したのち着水、生命に異状なしとのことで、逆に、すごいじゃないのと思いました。

画報躍進之日本 1941年12月号 画報躍進之日本 1941年12月号

画報躍進之日本 1941年12月号

 こちらは「独ソ戦特報第二便」です。少し前の「所蔵品から」で、ドイツとソ連がポーランドに攻め込むところの新聞(1939年9月)の切り抜きの地図をご紹介しましたが、その続きをドイツ側から見た記事です。ドイツ軍がモスクワへ向けて進んでいきます。
 「キエフ」が出てきます。現在はウクライナの首都、ウクライナ語でキーウと呼ばれています。ウクライナは当時ソ連の一部でした。「大殲滅(せんめつ)作戦を完了」と書かれています。81年前のキーウでもものすごく大きな戦闘がありました。
 カラーのページではモスクワの地図を紹介しています。

画報躍進之日本 1941年12月号

画報躍進之日本 1941年12月号

 最後に「ユーモア読物 新版お伽噺」。お伽噺は「おとぎばなし」、昔話とか童話とか民話とかその辺のジャンルの「おはなし」です。
 昔話を今風(1941年時点)にしたパロディーなのですが、「非科学的な古いお話をすると子供に笑われます」という前解説からはじまります。

 まずは「おばすて山」。テーマについては「道徳を無視し、日本古来の敬老思想と、家族主義の美点を破壊」「禁止の部に入るべき」と、厳しい意見です。
 改訂版は、村が凶作に見舞われたときに模範青年の太郎吉がおばあさんを背負って山に入っていった。村人は、ひどいことをした太郎吉を捕まえようと山のふもとで待っていた。山を下りてきた太郎吉はおばあさんと二人、山で採れる木の実を山のように袋に入れて皆の前に現れた(おばあさんは80年前の飢饉(ききん)のとき山で代用食を集めた経験があるので案内に連れていった)。その村は食糧不足を乗り越えた、という話です。

  次は「花咲爺」。
 「一億一心――殊(こと)に隣同士は「となりぐみ精神」をしっかり銃後にかためて仲よくしなくてはいけないのに、隣同志で正直爺さんと欲深爺さんで角(つの)つき合っていてはいけない」と説明があります。
 忠作さんが、犬(名前はポチです)の立ち止まったところを掘ると「古銭がざくざく」。さっそくそれを(お国のために)「全額献金」。
 もう一人の孝作さんが犬の止まったところを掘ると、「出たわ、出たわ、石炭鉱が――」。村の共有石炭山にしました。
 忠犬ポチは「フトした病で死んでしまいました」。二人は桜が咲くころに花の下で供養の踊りを舞ってやりました。

  「浦島太郎」は、竜宮城ではなく「南洋か蘭印(らんいん、オランダ領東インド、現在はインドネシア)の方へ行ってきたのでしょう」という事になっています。
 30年ばかりもてなしを受けた帰り道、浦島太郎は海中の潜水艦を初めて見ておどろく、という話です。
 案内の亀は、「日本にはもっともっと新兵器がたくさんあって、もし太平洋に戦争でもおきたら、世界中がアッとおどろく海底の新武器が出動しますよ」「サカナの中にもスパイがいますからウッカリ言えませんよ」とコメントしています。開戦直前になかなかのコメントです。


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