◆所蔵品から◆資料ナンバー831 科学朝日 1943年5月号 の話
資料班
科学朝日 1943年5月号 表紙
今月は、科学雑誌をご紹介します。「科学朝日」 昭和18年(1943年)5月号。特集は「海軍電気兵器」です。
戦争中の科学雑誌。普遍的な科学の話もありますが、戦時下ならではの内容もいろいろな所に入っています。
科学朝日 1943年5月号
最初はカラー写真のページ、「電気と色彩」です。
右ページ上の4つの丸は、「緑色のドーナツ状の研磨盤」「その表面」「材料になっている粒子 (石炭と珪素を電気炉内で化合させて作られる)」です。顕微鏡で見ると黒と緑の宝石のように見えると書かれています。
右ページ下は、黒と緑の粒子の撮影装置です。顕微鏡の接眼レンズ(のぞく所)にカメラが取り付けられ、撮影される粒子には横から光があたっています。
左ページ上は、蛍光灯と白熱電球の違いを説明する写真です。蛍光灯(右写真)は昼光に近い色合いで、光源が管型なので影が小さくなります。「時局下工場照明に最適」と解説があります。
左下は「蛍光の色彩」というタイトルがついています。
短波長の菫外線(きんがいせん)によって酸化物系蛍光体が発光し(右写真)、長波長の菫外線によって硫化物系蛍光体が発光する(左写真)という説明があります。
紫外線のことが「菫外線」と書かれています。菫は「すみれ」です。英語の紫外線もultraviolet(略してUV)、「すみれ(violet)」が入っています。
科学朝日 1943年5月号
「能率増進と電気」の中の「電試式電気浄油装置」のページです。「電試式」は、あまり聞いたことがない言葉なのですが、何かの略語なのでしょうか。
不純物が多くなった油を、以前は圧力をかけてろ過して(漉(こ)して)いました。
フィルターのところで1万ボルトの直流電流を加えることで、不純物が完全にフィルターに吸収されるようになったのだそうです。
約80年前の装置(機械)は、なんだか愛嬌のある見た目をしています。
科学朝日 1943年5月号
ほかのページは、駆け足でご紹介します。こちらは「戦争と黴」です。「黴」は、「かび」です。(「黴菌」は「ばいきん」と読みます。)
微生物のはたらき(発酵)でブタノール(航空燃料の原料)やビタミンB2などが作れるようになったというのが前半の話、後半は、レンズなどに発生するかびについて。こんなところに、という場所でも、「自らの屍を食って」生長すると書かれています。
科学朝日 1943年5月号
こちらは「五月の園芸」と「或る日の科学者」
「五月の園芸」は、「蔬菜(そさい)・果樹・花卉(かき)・盆栽」の項目で、季節の作業を紹介しています。野菜のことを「蔬菜」と呼んでいるようです。
「或る日の科学者」は「高木貞治博士」「数学界の大御所」です。
科学朝日 1943年5月号
「双眼鏡の出来るまで」です。左のページでは三つ編みの女性が作業をしています。
科学朝日 1943年5月号
「対象の美しさ」。おそらく今だと「対称」と書くのではないでしょうか。
結晶の中で原子が規則正しく並んでいる模式図と、結晶のX線写真に出てくる対称形の図形、さらに柘榴石(ざくろいし)と雪の結晶の規則的な形などを紹介しています。
科学朝日 1943年5月号
最後にご紹介するのは、「科学・技術の隣組」「ラジオの故障を見つけるには?」
です。
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