◆所蔵品から◆資料ナンバー9736 「要図ト写景図之書方」の話
資料班
要図ト写景図之書方 表紙(要図)、裏表紙(写景図)
1932年1月発行、1940年10月新訂第32版
今回ご紹介するのは、「要図ト写景図之書方」という冊子です。
「要図」は、簡略な地図の上に敵味方の兵や武器や隊がどこにどれだけいるか書いたものです。同じ情報を風景画のような鳥瞰図(ちょうかんず)の中に書き入れたものが「写景図」です。独特の記号や文字が使われています。
記号の解説のページには、米粒どころかゴマよりも小さい字で記号の説明が載っています。上下2段で18ページあります。
要図ト写景図之書方
記号の解説のページです。この解説を手掛かりに、実際の図を見ながら記号を読み解いてみたいと思います。最初の画像↑に戻ってみてください。
表紙(左)が「要図」、裏表紙(右)が「写景図」となっています。同じ場所の同じ状況を2通りの方法で図にしています。
北を表す「N」の文字があります。方角はとても大切な情報です。
色は、味方が青、敵が赤です。
右下、青い文字でbMGと読めます。筆記体、書き文字風のbは「大隊」を表します。MGは「機関銃隊」、マシンガンでしょうか。矢印の棒の途中に小さい丸は、「機関銃」を表す記号です。
biAは「大隊砲隊」、さかさまのYとHを組み合わせたような記号は「大隊砲」です。
丸付きの矢印のしっぽが二股になっているのは「自動砲」です。
敵は北に見える山に陣を構えていて、機関銃と擲弾筒(Tの下に白丸)を持っています。
赤と青の太い線は、兵隊が線のところまで来ているとか、線の内側に集まっているという事を表しています。
要図ト写景図之書方 第十一図・第十二図
図の書き方の説明と記号の一覧の後のページは、実際に書かれた要図、写景図がとじ込みで入っています。黄色い5ミリメートルの方眼に図が書かれています。
こちらも同じ場所、同じ状況を表す要図と写景図です。
赤、青共に丸にちょんと線が付いた記号があります。これは「兵」です。向いている方向が線の向きで分かります。
線がクロスして「+」になっているのが「下士官、分隊長」、その場のリーダーです。
図の上の方に「小隊ラシキモノ」と書かれています。要図の方には太めの線で横長の長方形があります。長方形は「部隊の集団」を表します。
要図ト写景図之書方より
もう1枚、いろいろ書かれている「要図」をご覧いただきます。
この図の下のほうにいくつかある「H」の真ん中に縦棒の記号は「野砲兵」です。アルファベットでは「A」です。小さい丸に旗のマークは「歩兵大隊本部」です。本部の記号には旗が付いています。司令部はデザインが違う旗が付いています。
地図の一番下、ちょっと見えにくいですが、かたかなの「キ」のような記号があります。「行李(こうり)」、物資の補給部隊の記号です。
要図ト写景図之書方より
ここでクイズです。これは何の記号でしょうか。
四角の上に噴水のような植物の芽のようなカモメのような眉毛のような。文字で書くときは「PT」です。
四角は「部隊」の記号です。何の部隊でしょうか。
さっそく答えです。「鳩隊」、伝書鳩に関係のある部隊です。
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