◆所蔵品から◆資料ナンバー8596 絵本「ふしぎなたいこ」(アカマツ・トシコ絵) の話
資料班
「ふしぎなたいこ」表紙・裏表紙 昭和22年 小学館
今月は子供用の絵本をご紹介します。小学館の、「なかよし文庫 一・二年生読本 ふしぎなたいこ」です。発行は昭和22年、1947年です。
さし絵を描いているのは「原爆の図」作者の一人、丸木俊です。
「ふしぎなたいこ」
最初のページを開いたところです。
手書きのような文字で、「ふしぎなたいこ」「トルストイ 童話」「アカマツ・トシコ」と書いてあります。
アカマツ・トシコ(赤松俊子)は、丸木俊の昔の名前です。
1941年に丸木位里と結婚して、1956年に赤松俊子から丸木俊に名前を改めています。丸木俊は1937年にはモスクワに滞在していました。
(丸木俊の経歴については、原爆の図丸木美術館発行の図録「原爆の図」1983年 を参考にしました。)
昨年のピースあいちでの「原爆の図」展では、丸木位里・丸木俊の画材とともにアトリエに置いてあったロシアの人形(マトリョーシカ)を展示しました。
「ふしぎなたいこ」さし絵
中身を見てみましょう。
主人公は「しょうじきな よい 男」のエメリアン。仕事に行く途中でカエルを踏みそうになった。しかしまたいで通り過ぎた。
すると後ろから名前を呼ばれ、振り返るときれいな女の人がいる。エメリアンとその女の人は夫婦になり家を借りて一緒にくらした。
「ふしぎなたいこ」さし絵
ある日王様が通りかかって、エメリアンの妻を見て、美しさにびっくりして、忘れられなくなってしまう。
なんとかお城に彼女を呼び寄せようと、家来(けらい)と悪だくみをする。
ここで注目していただきたいのは、王様の馬車のゴージャスさ。屋根のてっぺんには飾りが付いているし端のところもひらひらしています。車輪も飾りかカバーか、上半分が覆われています。馬は真っ白。さらに王様がハンカチかスカーフのようなものを持ってひらひらさせているところも見てほしいです。
悪だくみの方の絵では、王様と家来の顔と手の表情の豊かさが見どころだと思います。王様の冠はカラフルです。たくさんの、色とりどりの宝石が使われているようです。
「ふしぎなたいこ」さし絵
「たくさんの しごとを むりに いいつけて、 くたくたに なるまで しごとを させると よろしうございます。 きっと つかれて しんで しまいます」
という家来の提案によって、1日で庭を作らされたり、2日でお寺を作らされたりするエメリアン。でもなぜかできてしまう。
「ふしぎなたいこ」さし絵
エメリアンの妻へのおもいを語る王様と、怒る王様です。
王様は炎に、エメリアンの妻は赤い花にかこまれています。王様は靴もゴージャスで、つま先は長く、上を向いています。
怒る王様の絵では、王冠と衣服の派手さが目を引きます。白い円盤状の襟は、レンブラントか天草四郎かというイメージですが、ロシアでも使われていたのでしょうか。
王様はかなり年配に見えるのにエメリアンとその妻は子供みたいに描かれています。いくらなんでも年齢が離れすぎではないか、と余計な心配をしてしまう。王様の手は若々しいのですが。
「ふしぎなたいこ」さし絵
最後まで、たいこは出てきません。たいこが出てくるとすぐに物語は終わります。
「どことも わからない ところへ いって、 なんとも わからない ものを もってくるように」というむちゃな命令をされたエメリアンは妻のアドバイスを受けて旅に出る。3日めに森の中で出会ったおばあさん(妻によると妻の母親)に糸巻きをもらう。
おばあさんに言われたとおりに糸巻きを転がして北の町へ向かうと、たいこと糸巻きを取り替えてくれという男と出会う。
「どことも わからない ところの なんとも わからない もの は、この たいこ です。」と教わって、たいこを持って城へ戻る。その男の言うとおりに城のそばの川にたいこを捨てると、王様の兵隊が太鼓の音にひかれて川に沈んでしまう。王様はエメリアンの家来になって、」「エメリアンと およめさんは しあわせに くらしました。」
おしまい。
兵隊が川に沈まないで、ばらばらになって帰って行ってしまうという終わり方もあるようです。
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