◆開館5周年を迎えて  Nさんへの手紙◆ 

                                             運営委員 竹川日出男

                 

拝啓
 今年もひときわ暑い夏でしたが、それもややゆるんでそこここに秋の気配を感ずるようになりました。長い間ご無沙汰してしまいました。お変わりありませんか。

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2012年5月にリニューアルされた
ピースあいち展示「現代の戦争と平和」パネルより

 さて、ピースあいちは今年の5月で開館して5周年を経過しました。入館者の累計はこの5年間で約33,000人です。決して多くはありませんが、この種の会館としては健闘している数であると思っています。この間、組織を維持し、各種企画を立ち上げ、それを実施する体制として、運営委員20名とボランティア約70名、戦争体験の語り手登録者約70名という所帯で運営してきました。ほとんどがリタイアした高齢者が中心ですが、50代の比較的若い主婦の活躍も目立ちます。また20代~40代も若干ながら参加しています。5年間の年月で人の入れ代わりはありましたが、みなさん献身的によく頑張って活動しています。

 毎年、常設展示とは別に、沖縄展、教科書展、名古屋空襲展、現代の戦争と平和展などの目玉になるようなテーマを取り上げた企画展、所蔵品展など開催しましたが、これらの取り組みが運営委員やボランティアにとって大きな研鑽の機会ともなったと思っています。


 また、7月~8月には夏休みを考慮して子供向けの企画や、戦争体験語り手シリーズも行ってきました。
 さらに、春にはピースまつり、冬には年末祭を開催して地域とのつながりを図っています。
 このようにみなさんの奮闘で途切れない事業展開が図られ、メディア(特に中日新聞)への露出度は一番高い施設と言われるぐらいとなっています。

 こうした活動を通して、ピースあいちを運営していく上での重荷はなんといっても収支を維持していくことです。一人の専任従事者給与と水道光熱費、建物維持費、備消耗品費、印刷、通信費のほか大きな負担となっている土地・建物の固定資産税(年額約130万円)など合わせて年間総経費は約1200万円(減価償却費約350万円を含む)となっています。
 これを支える収入は、正会員・賛助会員約800人の会費300万円、寄付金約250万円、助成金・受託料約200万円、入館料等約100万円という数字で推移しています。

 ちょうど減価償却費相当分が毎年度の赤字ですが、その範囲ですんでいますので、資金繰りは何とか凌いでいます。 しかし、寄付金、助成金など不安定な収入に大きく依存しており、プライマリーバランス(基礎的収支)は全くよくありません。せめて固定資産税ぐらいは減免してほしいと河村名古屋市長に要請していますが、未だに成就しません。

 しかしピースあいちを運営していく上でうれしいこともありました。愛知県教育委員会は、ピースあいちの博物館活動を考慮して2010年8月に、博物館法に基づく「博物館相当施設」として認定してくれたことです。これによってピースあいちは名古屋城、愛知県美術館などと同等の公的施設としての地位を得ることができ、学校などの協力が得やすくなりました。

 さてピースあいちでは、本年が5周年の節目の年でもあるところから、開館記念展として『原爆の図展』を開催することとしました。丸木位里・俊夫妻による原爆の図の中から『第五部少年少女』と『第十二部とうろう流し』の二点を借り受け、7月28日から8月31日までの1ヶ月余り、現在も開催中です。
 大勢の観客でピースあいちは毎日賑わっています。本来休館日である日曜日・月曜日もこの期間限定ですが開館しています。
 8月一杯で終了となり残り会期はわずかですが、あなたもぜひお越しください。

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戦争体験の語り 2012年8月


 ところでピースあいちにおける私はといえば、主として「ピースあいち語り手の会」の事業に携わっています。
 戦争体験者を小中学校などに派遣したり、ピースあいちを訪れる小中学生や各種団体に対して戦争体験を語り伝える事業は戦争資料館の重要な活動の一つと心得、私なりに一生懸命取り組んでいるつもりです。

 体験者が語る機会は年々増加し、昨年度は延べ69回、3100余名の人たちに伝えることができました。聞いてくれた子供たちの感想文を読んでみると、幼いながらもしっかりとした受け止め方をしていることにいつも達成感を味わっています。  
 しかし語り手の皆さんは、当然のことながら年々歳を重ねられるわけで、「語れる状態」にある方は極端に減少しています。どの方に語っていただくかはいつも悩みますが、語り手の皆さんの健康状態に配慮しつつ、またコミュニケーションを保つように心がけ、依頼者の期待に応えていきたいと思っています。


 以上、近況を思いつくまま書きましたが、こうした事業を全員ボランティアの集まりで実行しているのは稀有な例ではないかと思っています。平和博物館の活動として他の施設からも注目を集めています。皆さんの熱意には私もほとほと感服しています。
 これからも、仲間の皆さんと仲良く、楽しく、そして少しでもお役に立てるように活動していきたいと思っています。

 今後とも、ピースあいちの活動にご支援をいただきますよう心よりお願い申しあげます。 時節柄お体にはくれぐれもお気をつけになってお元気に過ごされますようお祈り申し上げます。
                                                              敬具
    平成24年8月吉日