2025年沖縄展「沖縄から平和を考える-沖縄の基地問題は私たちの問題」に寄せて

当NPO理事(名古屋市立大学名誉教授) 阪井 芳貴





 現代社会には、情報があふれかえっている。そのあふれかえりには、なんだか意図的な操作によるものもありそうである。
 「戦後80年」ということばを冠した記事やイベント、メディアの特集などの氾濫にも、そのことを痛感させられる。80年という数字に、本来は意味はない。79年あるいは81年と、どれだけ意味の違いがあるのか、誰も説明しないし、できない。にもかかわらず、キリが良いからというだけで80年を強調しているのは、来年からしばらくは、ことさらに取り上げないという意思表明なのかとさえうがってみたくなってしまう…。

 ただ、80年という数字にあえて意味を持たせるとすれば、日本人の平均寿命に近づくので、ここでしっかり立ち止まって見よ、という区切りとは言えるかもしれない。これが「戦後90年」になると、もうほとんど太平洋戦争体験者はいなくなる現実がある。少なくとも、自分の言葉で戦争体験を語ることができる人は極めて少なくなるであろう。とすれば、今年の「戦後80年」はギリギリのタイミングということはできよう。

 ピースあいちも、この80年を意識したプロジェクトが進められている。ただ、ピースあいちの活動は、特定の年に特別なことをおこなう、というのではなく、常に、継続して過去の戦争について知り、考える場を提供し、平和への決意を発信する拠点のひとつとなることを意図してきたと私は理解している。
 その意味で、恒例となっている沖縄展は、毎年沖縄の慰霊の日をはさむ一か月余りの期間、名古屋と沖縄をつなぎ、近現代沖縄の担わされた問題を取り上げ、それに向き合うことで継続的に沖縄県民の抱えてきた歴史と課題を自分事として捉えられるように企画してきたつもりである。

自衛隊の地対艦ミサイル配置
(作成:ピースあいちボランティア)

 今年の沖縄展は、まさにそのことをタイトルに掲げることで、あらためてピースあいちを挙げて「沖縄」を知り、考える機会としたいという想いを結実させようと準備している。その準備作業の中から浮かび上がってきたのは、沖縄で起きていることが我々の身近にも迫ってきている、という現実である。
 具体的なことがらについては展示をご確認いただきたいが、我々の知らないところ、気づかないところで、急速かつ着実に「南西諸島軍事要塞化」が進むのと同時並行で、いろいろなレベルで日本列島軍事要塞化も進んでいるということである。しかも、トランプ政権の出方によっては、それがさらに加速することも危惧される。

 こんなはずではなかった、知らなかった、ではすまされない近未来が具現化しつつあることに気づくためにも、今年の沖縄展、そして今年のピースあいちの活動をしっかり見ていただきたいと願っている。それが、「戦後80年」の意味なのだろう、と思う。

日米共同統合演習中の自衛隊(右)と米軍(左) 2025年2月22日
沖縄県国頭郡金武町 米軍基地キャンプ・ハンセン
(出典:米国防総省画像配信サイト dvids)