2024年を振り返って
事務局長 赤澤 ゆかり
マグニチュード7.6の能登半島地震が発生し、不安な年明けを迎えた2024年。9月には被災地を大雨が襲い、被害がさらに広がりました。
世界に目を向けても、各地で地震や洪水などの災害が起きています。戦争や紛争も一向に終結する兆しがありません。ボランティアさんたちと、心の痛みを分け合っています。来館される方々のアンケートからも、過去の戦争と今の戦争と平和の問題を結びつけて、深く考えておられることが読み取れます。
今年開館17年目のピースあいちは、10月19日に10万人の来館者を迎えることができました。「ピースあいちの役割がますます大きくなってきている」と、宮原館長は話します。
昨年から取り組んできた「バイリンガル・プロジェクト(常設展示の英語翻訳)」が完成し、館内Wi-Fiを利用してスマホやタブレットで閲覧していただけるようになりました。公開にあたっては、国際交流に興味のある方や団体関係者をご招待し、交流会「TRY & TALK それぞれが考える戦争と平和」(3月9日)を開催しました。まだ十分に周知されているとは言えませんが、来館される外国の方に喜んでいただいています。
このプロジェクトのご縁で米国のアーティストと出会い、B29の飛行エンジニアとして名古屋空襲に参加した彼の父親の「軍事任務証明書」の存在を知ることができました。それを基にした名古屋空襲展「80年前、父は名古屋を焼き尽くした―B29搭乗員の記録から」(2025年3月11日~4月26日)を開催します。少しずつ国際交流が始まっています。翻訳にご協力いただいた方々、ありがとうございました。さらに国際交流を意識した活動を進めていきます。
ピースあいちは近隣の学校とも交流をし、生徒たちの「戦争と平和」に関する作品の展示を行っています。今年は「中学生のメッセージ展」 神丘中生が未来の中学生に贈るメッセージ(1月16日~3月30日)を開催。現在は、瑞穂ヶ丘中学校3年生の「平和新聞」を展示しています(12月14日~2025年2月28日予定)。
近くの東邦高校とも交流を続けています。今年は、生徒会が2014年から市に申し入れてきた名古屋空襲慰霊の日の制定が、「なごや平和の日(5月14日)」の条例制定として実現しました。そこで、企画展「名古屋空襲を知る―なごや平和の日制定に寄せて」(3月12日~5月18日)を開催し、「名古屋空襲を知る」「東邦高校の平和活動」のパネルと、空襲体験者の話を聞いて描いた美術科生徒の作品を展示。生徒さんたちに、ギャラリートークもしていただきました。
夏の特別展は「マンガと戦争展」(7月23日~9月14日)。京都国際マンガミュージアムのご協力を得て4つのテーマ「原爆」「特攻」「満州」「沖縄」にピースあいちの視点を入れたパネルと関連資料の展示をしました。さらにオリジナルの「2つの物語」で、おざわゆきさん『あとかたの街』と、汐見 夏衛さん (原作)、マツセダイチさん(マンガ) 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』のパネルも展示。
一か月半の会期中、1500人を超える来場者で連日にぎわいました。座り込んで、夢中でマンガ本を読んでいる子どもたちの姿が印象的でした。
10月11日、2024年のノーベル平和賞が被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」に授与されるというニュースが飛び込んできました。ピースあいちのお仲間である「愛知県原水爆被災者の会(愛友会)」の方々も、「賞を力に変えて被爆者の2大要求(戦争・核兵器廃絶、被爆者への国家補償)を実現していきたい」と、喜びを語ってくださいました。ピースあいちもさっそく、プチギャラリーにパネル展示をしてお祝いをしました。
来年は戦後80年。ピースあいちも、「戦後80年 平和な未来のために 今 知る 考える 動く 伝える」をテーマに、8つのプロジェクトをボランティアが提案し、自分もやってみたいという人たちとチームを作って取り組んでいます。初めての企画も多くあり、私も楽しみにしています。
来年もピースあいちをよろしくお願いします。どうか、良い年になりますように。
【そのほかの主な2024年ピースあいちの展覧会】
・第11回寄贈品展「戦争が遺(のこ)したモノたち」(2023年12月5日~2月24日)
2022年6月から2023年6月の間に寄贈・登録された資料367点を展示
・絵画展「ウクライナの子どもたちが描いた絵~いま、戦時下からのメッセージ」(5月21日~5月30日)
特定非営利活動法人 チェルノブイリ救援・中部さんとのコラボでした。短期間でしたが、どうしてもやりたくて。
・企画展「沖縄から平和を考える~辺野古の海は今」(6月4日~7月13日)
現在の問題として、辺野古新基地建設を取り上げました。
・子ども企画展「戦争の中の子どもたち」「戦争と動物たち」(10月1日~11.月3日)
特別展示は『戦時下の子どもを深掘りする』と称して、「少国民」「誉(ほま)れの子」「三河地震と疎開学童の悲劇」「空襲で焼失した学校」を取り上げました。
・第12回寄贈品展「知ってほしい 戦争の時代」(12月3日~2025年2月22日)
今年6月までに寄贈された資料143点を展示しています。これらの戦争資料は今後の企画展に生かしていきます。貸し出すこともできます。