第12回寄贈品展「知ってほしい 戦争の時代」 準備真っ最中です!

運営委員(資料班)  橋爪 玲子





 第12回寄贈品展「知ってほしい 戦争の時代」が、12月3日(火)から開催されます。
 今回は、2023年7月から2024年6月までに寄贈された資料143点を寄贈者別に展示公開します。開館以来、市民の皆さまからご寄贈いただいた戦争と平和にかかわる資料は、現在4,100点を超えています。そしてこの1年間に新たな30名の寄贈者の方々から貴重な資料が寄せられました。
 第12回寄贈品展のサブタイトルは、「知ってほしい 戦争の時代」です。展示会場で寄贈された実物資料を「見る」ことは、戦争について理解を深め、戦時下の市民の暮らしや軍隊生活などを「知る」手がかりとなり、自分自身や家族に重ねて「考える」機会となります。あらゆる世代の方に見ていただきたいと思います。

寄贈品の由来を調べる資料班

 寄贈品展の開催にあたり、資料班は寄贈者の方から資料の来歴やエピソードをお尋ねし、まとめたものを目録の説明文やキャプションなどで紹介しています。「いつ」「どこで」「だれが」「どのように」使われたものかを、できるだけ聞き取るように心掛けています。
 聞き取り後、実際に寄贈品を手に取り向き合うと、使用者との関係性が少しずつ見えてきます。


軍隊手帳

 資料から知る情報としては、軍隊手帳は、使用者について知る上で貴重なものです。陸軍の兵士全員に支給されたもので、今回も4点寄贈されました。
 手帳の後半を開いてみると、兵士の氏名、生年月日、本籍にはじまり、所属部隊や軍歴などが記入されています。軍服や防寒用コートの内側の検品印からも、「九八式 昭和15年製」などを読み取ることができます。
 また、衣料切符や家庭用回数購入券(味噌、醤油、砂糖、マッチなど)や児童用菓子回数購入券なども10点程寄贈されました。当時の家族構成と照らし合わせて、市民の暮らしがうかがえる貴重な資料です。


 戦争体験者の高齢化により、30名の寄贈者のうち本人からの寄贈は今回2名でした。戦争体験者の子ども(60代〜70代)が15名で半数を占め、次に孫世代4名と続きます(配偶者2名、兄弟姉妹2名、親類2名他)。
 多くが、遺品として寄贈者が見つけたものです。寄贈品を見つめながら、「もっと戦争のことを聞いておけば良かった」という声がよく聞かれます。今後、寄贈者が子どもから孫の世代に移ると、ますます寄贈品についての情報は少なくなり、戦争資料そのものが散逸していくことが予想されます。

 戦後生まれが大半となり、戦争の記憶の風化が懸念されています。今回の寄贈品に、寄贈者ご本人が描いたA4サイズの小さな3枚の絵があります。
 寄贈者は、88歳の男性。現在病気療養中です。87歳になり、突然ご自身の戦争体験を伝えたいとの思いから描かれたそうです。空襲のなか、病身の姉をリヤカーに乗せて庄内川堤まで逃げた場面が印象的ですが、今まで家族にも話すことはなかったそうです。

 ロシアによるウクライナ侵攻やガザ地区の惨状を報道で知り、「戦争は、遠い昔の出来事ではない」とあらためて実感しました。戦争の惨禍を二度と繰り返さないために、私たち一人ひとりが戦争の記憶を絶えることなく伝えていくことが大切です。
 本展が、戦争の時代を知り、平和な未来を考える機会となることを願っています。