「朝鮮半島からの引き揚げ 10歳少年(松崎尚夫さん)の体験」
       愛知サマーセミナー2024」を終えて
ボランティア 近藤 世津子

                                           
 

 毎回多彩な講座(しかも参加無料)で多くの人が足を運ぶ「愛知サマーセミナー」。今年は7月13~15日の3日間、東海中学校・高等学校など4か所の会場で開催されました。
 ピースあいちは、そのうち「あずま中学校」の会場で、14日に講座を受け持ちました。

 ピースあいちは、例年、サマーセミナーで講座を行っていますが、今回は「朝鮮半島からの引き揚げ 10歳少年(松崎尚夫さん)の体験」を野村秀夫さんが語り継ぎを行いました。
 野村さんは、昨年講座を担当した大橋さんと同じく「ピースあいち戦後75年プロジェクト」をきっかけに語り継ぎ活動に参加されています。当初から、朝鮮半島の引き揚げ体験にテーマを絞り、着々と準備を進めてこられました。また、先日、語り継ぎの主人公である尚夫さんのご家族を訪ねられ、その際のインタビュー映像も語り継ぎの中で紹介しています。

 「なぜ朝鮮半島に日本人が多く住んでいたのか?」という、語り継ぎの大前提となる歴史的背景を、ピースあいち語り継ぎ手の会の熊本典生さんが分かりやすく解説を行ったのち、野村さんの語り継ぎが始まりました。
 日本の敗戦で、朝鮮半島から母や姉、妹たちと日本への帰還を目指した尚夫少年ですが、その道程は辛く、厳しいものでした。乏しい食料、冬の寒さ。幼い妹たちには徒歩での移動は過酷です。そして、朝鮮半島の38度線を超えることなく、病気のために母は亡くなってしまいます。
 野村さんは、尚夫さんの体験を綴った「遺稿集」やノートを基にして、語り、写真、地図、イラスト、そして尚夫さんやご家族のインタビュー映像を用いて、尚夫さんの半生をくっきりと浮かび上がらせました。

 

 会場には、尚夫さんの妹さんがご夫妻で参加してくださっていて、妹さんからは「私だけでも生きていて、野村さんの話が聞けてよかったです。」との温かいコメントもいただきました。
 受講者の中には、自ら選んで語り継ぎ講座を聴きにきてくれた中高校生もいて、「この話をもっと多くの人に伝えたい」「これから、大勢の方のお話を聴きたい」などの嬉しい感想も寄せてくれました。
 この日が初めての実践とは思えない、落ち着いた語りで講座を務めていただいた野村さんですが、「戦争のない日本、平和な世界を目指して語り継ぎをしていきたい」と、決意を新たにしていました。
 野村さん、これからもよろしくお願いいたします!