企画展「沖縄から平和を考えるー辺野古の海は今」
 映像展示 ~ 沖縄を知り、より身近に感じてもらうために
ボランティア  牧野 修三




 

“The ultimate tragedy is not the oppression and cruelty by the bad people but the silence over that by the good people.” (Martin Luther King, Jr.)
「最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である。」 (キング牧師)
 本稿の主題を考えるにあたり、真っ先に思い浮かんだ言葉です。悲劇の対象や時代に縛られない、普遍的な言葉でもあると思います。

 さて、本題です。
 ピースあいちでは2024年6月4日(火)から7月13日(金)の期間で、企画展「沖縄から平和を考える~辺野古の海は今」を開催しています。毎年行われている沖縄展は、琉球王国の時代から沖縄戦、そして現代まで、沖縄の歴史を振り返る準常設展と、毎年異なる特定テーマに焦点を当てた展示で構成されています。

 世界各地で起きている絶えることのない人権侵害や血生臭い非人道的行為、近年急速に進む世界的な軍備増強の動き。日本もその例外ではありません。過去の戦争の惨禍を体験された方々、体験はしていないが何が起きていたかをよく理解している方々は、この様な問題に対して「沈黙」せずに反応し、警鐘を鳴らしています。一方では、自分には関係のないことと受けとめ静観している方も多いのではないでしょうか。
 沖縄はこうした問題が永年にわたって顕著に表出してきた場所ですが、特に今年の沖縄展の特定テーマに取り上げている辺野古には、沖縄だけにとどまらない日本全体が関係する問題が現在進行形で現れていることから、「辺野古の今」を知ることは、とても重要な事と思います。展示パネルには、「辺野古の今」に至る経緯とともに、「代執行」などの現状がまとめられています。

 私の役割は、歴史的・政治的な知見からの解説とは別に、「辺野古とはどういうところか?何が起きているか?」を分かりやすく伝えることでした。そこで、今までの企画展にはなかった新たな試みとして、映像による表現に取り組んでみました。映像は膨大な情報を伝えるには限界がありますが、要点を短時間で伝えるには有効な手段です。

名護市役所発行の冊子

 映像表現する上で心がけたのは、現地の声を大事にする、できるだけ全体像を描く、できるだけ短く簡潔に、です。
 現在の沖縄・辺野古、現地の声を知るのに役立ったのはネット上の数々の情報でした。もちろん、事実とは異なるフェイク情報が氾濫するネット世界ですから、情報源や真偽の検証には注意を払いました。
 とりわけ参考になったのは、名護市役所が発行した「米軍基地のこと 辺野古移設のこと」という冊子でした。この冊子から多くを学ぶことができ、関連情報を更に収集していくための道標にもなりました。「豊かな恵み」、「米軍基地」、「新基地」とした映像の構成は、この冊子から着想を得ました。


 映像最初の画面は、「辺野古の今」の全体像を表現したいと思って描いたイラストです。このイラストは沖縄県名護市出身のイラストレーター 仲地 静香さんが描いた「ホープスポット(希望の海)看板」に触発されています。映像中の大浦湾の美しい水中写真は、沖縄県恩納村 (株) ワールドダイビングの空 良太郎さんから快く許可をいただき掲載しました。これら以外にも、沖縄・辺野古の方々が発信されている様々な情報があったからこそ完成した4分弱のショートムービーです。メインとなる展示パネルをご覧になる傍ら、息抜きを兼ねてご視聴ください。

3階 「沖縄展」展示室 視聴コーナー
映像最初の画面

 最後に、冒頭に掲げた言葉に戻ります。
 「最大の悲劇たる善人の沈黙」には、いくつかの異なる段階の沈黙があると考えます。
  ①無知からの沈黙: 知らない、知らされていない
  ②無関心からの沈黙: 知っているが、興味がない、自分には関係がない
  ③意図的な沈黙: 何らかの理由で言わない、言えない (問題意識はある)
 今の沖縄・辺野古を知ることをきっかけとして、世の中で起きていることが自分や自分の愛する人たちにも大いに関係のあることだと気づき、少なくとも「②無関心からの沈黙」から脱却していただければと思います。


 なお、2階映像コーナーでも沖縄展に関連した動画をご覧いただくことができます。沖縄戦の語り継ぎ動画と、沖縄戦での体験などを紙芝居にした動画です。いずれも感情を揺さぶられる貴重な視聴経験となるでしょう。

2階 映像コーナー
トップ画面 (動画選択画面)



 雨が続く憂鬱なこの時期、屋内施設のピースあいちに是非お越しください。