2024年度沖縄展に寄せて
名古屋市立大学名誉教授 阪井 芳貴
この4月11日に、防衛大臣は沖縄県うるま市での自衛隊訓練場新設を断念したと、市民へのおわびかたがた表明しました。土地取得などの予算措置がされた後での白紙撤回は、ある意味、画期的ではありましたが、いっぽうで沖縄県内に自衛隊訓練場を新設する計画自体は撤回されていません。
防衛大臣は、今後沖縄県内の別の場所に、新たに土地を取得して計画を進めると明言しています。沖縄県内では、依然として警戒が緩むことはありません。
沖縄国際大学5号館の階段踊り場から見える普天間基地。
オスプレイが停まっている。(筆者撮影)
昨年のピースあいちの沖縄展は、着々と、かつ急ピッチで進められている南西諸島の軍事要塞化の実態を正確に把握するべく、昨春時点での沖縄・奄美の島々の自衛隊配備や基地建設の状況について新たなパネルを作成し展示しました。ほとんど本土では報じられない実態をお伝えできたのではないかと振り返ります。
冒頭に述べましたように、この一年の間にも、さらに基地を造る動きはとどまることがありませんので、引き続き沖縄・奄美から眼を離すことはできません。
キャンプシュワブのフェンスに貼られている「警告版」
(筆者撮影)
この南西諸島軍事要塞化の最大の懸案が辺野古新基地建設問題であることは、誰も疑いようがありません。
うるま市での自衛隊訓練場新設を断念した防衛大臣は、その断念表明の中で「住民生活と調和しながら訓練の必要性を十分に満たすことは不可能と判断した」「地元の状況についての把握・分析・検討が不十分だったと評価している」と述べました。この発言が、心からの反省に立って防衛省から出されたとすれば、同じ理由・理屈で辺野古新基地建設についても断念すべきだと考えますし、またそれが可能であるともとれます。
が、これも4月に開かれた日米首脳会談では、日米関係を「未来のためのグローバル・パートナー」とうたい、米軍と自衛隊との指揮・統制機能の一体化を進めることを決め、さらに普天間飛行場の移設は辺野古が唯一の解決策であると、あらためて確認しています。
なぜ「唯一の解決策」なのか、米軍と自衛隊の連携強化は基地負担軽減に逆行するものではないか、などの沖縄県民・日本国民の疑問・懸念は深まりこそすれ、薄らぐことはありません。また、辺野古新基地建設について、たとえば総工費や工期について最新の情報は国民に明らかにされていませんし、南西諸島軍事要塞化についても隠密裏に事が進められ、住民・県民に説明されるのは工事直前だったり、ある程度事が進んでからということが頻発しています。
そうした状況下、在沖米軍基地においては、PFASの問題やオスプレイの飛行再開、在外基地からの戦闘機などの飛来増加に伴う騒音被害の拡大などなど、さまざまな意味での基地負担は軽減されるどころか、ますます増えているのが実情です。
今年度の沖縄展では、そうした状況を踏まえつつ、あらためて辺野古新基地建設の問題を正面から取り上げます。そもそもの普天間飛行場の移設問題の経緯、移設計画の推移、埋め立て工事の現状、沖縄県と国との法廷闘争と国による代執行などなど、歴史と現況とをわかりやすく解説し、本土ではなかなか取り上げられない・報じられない辺野古の問題について知り、自分事として考えるための展示を心がけました。ぜひご覧ください。
また、関連イベントとして、プチギャラリーでは、沖縄県内での沖縄戦の語り継ぎの事例紹介を、慰霊の日(6月23日)には映画「島守の塔」上映会を開催いたします。