企画展「名古屋空襲を知る」関連イベント ギャラリートーク

                                           
 

 3月12日から企画展「名古屋空襲を知る―なごや平和の日制定に寄せて」が始まりました。

初めての展示会場の設営(3月9日)

 3月16日には、戦争体験者のお話を聞いて、「戦争とは何か」「平和とは何か」を美術作品にした東邦高校美術科の生徒が、作品を前にギャラリートークを行いました。13歳の時の戦争体験をお話しされたピースあいち語り手の筧久江さんも駆けつけました。また、「平和の日」制定を願って10余年にわたって活動をつづけてきた東邦高校の取り組みについてもお話をうかがいました。
 (ギャラリートークの内容は、企画展開催中に2階映像コーナーでご覧いただけます。)


でき上がりました!
緊張したギャラリートーク

◆東邦高校美術科小塚康成先生から
 戦争講話を聴いての作品作り・展示は5年前に初めて取り組み、今回で2回目となります。
 東邦高校では平和教育に力を入れています。美術科のある学校で美術を学ぶ生徒たちが作品を通じて表現するということで1年生の総合学習の取り組みとしています。筧さんのお話をお聞きしてから半年、ウクライナやイスラエルなど世界に目を向け、生徒たちは「戦争とはなにか」「平和とはなにか」を作品に仕上げてきました。


◆生徒のみなさんから、制作にあたっての思い

「雨」
雨からイメージして、てるてる坊主をモチーフにしました。てるてる坊主には“明日は晴れますように”という意味があります。黒い雨が止み、戦争が終わることを祈る女の子の気持ちを表しています。戦争を次の世代に語り継ぐ手段としては絵本が最適。絵本の表紙にとイメージし、ストーリー性や文字のレタリングにこだわりました。



「責念」
私の足をつかむ赤い手は、かつて戦争で亡くなった方の念。背景の黒い部分は、キャンバスの側面から見ると青い空。赤い部分は茶色の土。戦争と現代の対比として表しました。戦争の話は重く暗く、自分とは関係ないもののように感じるかもしれないけれど、いつ自分の暮らす場所で起こってもおかしくない。日常と表裏一体。二度と誰も苦しむことがないよう、次世代に繋いでいきたいと思います。



「乱反射」
飛行機のなかを絵画的にこだわって描きました。自分の感情をこめないで、ネガティブな感じもポジティブな感じも出さない、情報の少ない作品にしました。見てくださった方に想像してほしいと思っています。



「少女よ闘志を燃やせ」
「この少女は何でスカーフをしているのだろう」「何で泣いているのだろう」「この髪型見たことある」「この構図どこかで見なかったかな」と思われるでしょう。この作品をピースあいちという平和を考える場所に置いて、みなさんに見てもらうことによって、この絵に意味を入れてもらえたらと思います。



「あなたの奪ったもの」
たくさんのニュースを見ました。子どもたちは避難するために、大好きな家族や家、友だちとはなればなれになっていることを知りました。ひまわりは戦争を経験した子どもたちです。戦争の中で、どんどん元気がなくなり、なみだもかれ、もう二度と同じように元気にはなれません。子どもたちはこれからも不安やトラウマといっしょに生きていくのです。「戦争は子どもたちから未来を奪う」ことを表現しました。



「純白」
放射性物質を含んだ黒い雨が人のきれいな顔にかかったり、その黒い雨を水分補給のために飲んでいたという事実。考えられない、考えたくない!けど、そういう事実に背を向けず、向き合うことが大切だと思い、立体で表現しました。人を表現する上で、石膏像の白い美しさを意識しました。



「死中をくぐり抜けたその先は」
死中とは死ぬような境地にあって、生き延びる道を見つけることです。白い人形は死んだ軍人さん。死んだ後に何を思うのでしょう。家族のこと、子どものこと、愛する故郷のこと。…過去のことは取り戻せない、未来のこともわからない。今を生きるために、あなたは未来に何を残したいの。真二つに折れた銃、これは未来を表しています。戦争がなくなれば奪われることもなく、悲しむこともなく、平和に笑顔があふれる世界になると思います。



「希望」
最初は、戦争のつらさを伝える作品をつくろうと思いました。考えているうちに、戦争を乗り越えた先の未来をつくりたくて、前向きになれるような作品をつくりました。テーマは「希望」です。私自身これから希望をもって生きていきたいと思います。作品の中にハートマークが隠されているので探してみてください。



「葉砲」
銃の先端から花がとび出ている作品です。人のいのちを奪う銃。銃は今後もなくならないかもしれませんが、人のいのちが奪われることがないようにとの思いをこめてつくりました。フォークとナイフは戦争の悲惨な思い出を人々が飲み込み、咀嚼し、反芻し、忘れないようにと思い置きました。



「死への投影」
今私たちは、気軽に笑顔で写真を撮っています。戦争中、若者は死ぬことが決まっている遺影のために写真を撮っていました。となりに描いた骸骨は、写真を撮ることイコール死の世界にいってしまうということを表しました。



◆東邦高校の「平和活動の取り組み」
 今年「なごや平和の日」が制定されようとしています。東邦高校では生徒会の中に「慰霊の日実行委員会」をつくり10数年前から取り組んできました。1944年12月13日、勤労動員先で空襲にあい、僕たちの先輩18名と教員2名がなくなりました。東邦高校には慰霊の「平和の石碑」がおかれています。
 当時の生徒会長さんは「いのち自体が宝物。平和であることをあたり前とせず、ずっと平和を守っていきたい。全ての国の人々が笑顔でいる時代を願っている」と僕達に残してくれています。2014年、「名古屋空襲慰霊の日を」と市長に要望書を出したり市議会への請願署名を届けたり運動をすすめてきました。それが、今実現しようとしています。平和を紡ぐ想いが紡がれてきた。僕たちもこれからも紡いでいきたい。



◆ピースあいち・宮原館長から
 ようやく今月21日には市議会で「なごや平和の日」として実現します。ここまで運動をすすめてこられた東邦高校の先輩のみなさん、現役のみなさん、長い長い思いを引きついできてようやく実現することを、ともに喜びたいと思います。
 5年前、戦争体験者の方のお話を聞いて創作された作品をここで展示しました。5年経って今回の作品は、戦争が過去のものではなく、今の問題、今のことだというとらえ方が強くなっているように思いました。ウクライナやガザの問題と結びつかざるを得なかったんだと思いました。戦争はいったい何なんだろうか、平和をどうしたらいいのだろうかと、高校生のみなさんが創作で発表されたことを、ともにてもいいことだと思います。
 ピースあいちの「名古屋空襲を知る」展示では、「なごや平和の日」は5月14日に決まるとあります。5月14日は名古屋城が燃えたという衝撃的なことですが、名古屋への空襲はその日だけではなかったということを知っていただきたいと思います。東邦高校の先輩たちが犠牲になった12月13日、その後大規模な空襲が何度もあった、ということー名古屋への空襲の全体像を読み取っていただきたいと思います。