蓄音機で聴く戦前・戦後の歌謡曲~発禁レコードを中心に~ 企画:SP俱楽部78
ボランティア 吉田 稔
2月10日、「蓄音機で聴く戦前・戦後の歌謡曲」を開催しました。今回は「発禁レコード」を中心に企画しました。定員はコロナが増えていることもあって40名と限定しましたが、丁度、40名の予約となりホッと一息しました。
歌にまつわる解説をする井上さん
メンバーは、井上さん、岩田さん、市川さん、高山さんの4人で、いずれも大の蓄音機マニアです。岩田さんはSPレコードのコレクターとして大変有名です。高山さんはクラシックに造詣が深く児童文学にも精通しています。市川さんはジャンルを問わず幅広く収集していて写真マニアでもあります。井上さんは蓄音機の素晴らしさを啓蒙することを目標としています。
そして、グループ名「SP俱楽部78」とは、愛好するSPレコードに掛けて名付けられました。一般的に、SPレコードとは国際的には “78 rpm record” と呼ばれることが多いのですが、これは多くのSPレコードが78 rpm(1分間に78回転)を標準としているからです。1960年代初頭までは生産されましたが、その後はLPレコードに完全に移行しました。そんなことを踏まえてのグループ名「SP俱楽部78」は、おしゃれな名前です。そして、そのSPレコードを蓄音機で聴くわけですから、SPレコードにとってこんな幸せなことはないのです。
プログラムに沿って、(A)検閲が厳しくなる前 (B)検閲が厳しくなった頃 (C)戦後の自由な空気の中で の3区分で紹介されました。
(A)検閲が厳しくなる前
代表的な曲は、「山寺の和尚さん」で内容はモダンな旋律とハーモニーで、ジャズ風の雰囲気のある曲でした。とても戦時中とは思えないものでした(日中戦争の真っただ中)。この曲は服部良一が作曲し、当時、ジャズを得意とした中野忠晴が歌いました。
(B)検閲が厳しくなった頃
代表的な曲として、淡谷のり子の「別れのブルース」と灰田勝彦の「きらめく星座」があります。「別れのブルース」は退廃的だと軍部から睨まれていましたが、まず満州で大流行して日本全国でヒットしました。淡谷のり子は派手な化粧と衣装で批判されましたが「これは私の戦闘服です」と言って意志を貫いたエピソードは有名です。ところが、もう一曲の「きらめく星座」は、灰田勝彦がハワイ出身ということもあり、時代も昭和15年でしたから、厳しい検閲がありました。「きらめく星座」は歌詞の変更を命ぜられました。例えば、
男純情の愛の星の色 ⇒ 男純情の聖い星の色
生きる命は一筋に男のこころ ⇒ 国にささげて一筋に男のこころ
(C)「戦後の自由な空気の中で」
代表的な4曲を選んで、自由の素晴らしさを満喫しました。その曲とは、①並木路子・霧島昇「リンゴの唄」、②笠置シズ子「東京ブギウギ」、③笠置シズ子「買い物ブギ」、④藤山一郎・奈良光江「青い山脈」です。特に今回は、NHK朝ドラで笠置シズ子の自伝的ドラマが放送されていることもあってリクエストがあり、笠置シズ子の「買い物ブギ」が追加されたのです。
私たちイベント班としても、朝ドラとの関連もあり寄贈品展と連動した企画と位置付けました。また、井上さんからは蓄音機の寄贈もあってピースあいちとしては大変良い企画となりました。
参加者の感想から
蓄音機で聴く戦前・戦後の歌謡曲に興味があり、逸話など知るにつれその時代の息吹が伝わりました。NHKの朝の連続ドラマとのタイミングにも合い、効果的でした。
楽しくきくことができました。解説を聞いて、また自分でも調べたり関連本を読んだりしたいと思いました。
蓄音機の音、初めて聞きました。
いろいろ知らないことが知れてよかったです。「買い物ブギ」は夫が好きで思い出の曲みたいです(今日は来ていませんが)。戦後の「リンゴの唄」がつらい思い出をかかえてやっとの思いで明るく歌ったとは、心にしみることでした。