企画展「地図と写真で見る名古屋と戦争」によせて◆会場で謎を解いてみませんか!
運営委員 金子 力
明治から昭和にかけて発行された市販の名古屋市街図を見ていくと、陸軍施設や兵器工場の拡大する様子を見ることができます。
ところがある時から、それらの施設や工場が地図から消えてしまいます。地形図に至っては、陸軍施設と兵器工場のあった場所が市街地として描き直されています。正確さを最優先させてきた地図から事実が消され、地形図が「改描」(かいびょう)されてしまったのはなぜなのか、一緒に考えて謎解きをしませんか。
明治政府は近代国家を建設するために陸軍参謀本部に陸地測量部を設置し、日本全土を統一した規格で20万分の一、5万分の一、2.5万分の一などの地形図を作成します。正確な地図は鉄道・道路・港湾の建設、産業の振興などに不可欠であるばかりか、国防上必要でした。
国の事業として進められた地形図の発行でしたが、多額の費用を補填するために地図を公用以外にも販売して費用の補填に宛てることにします。
ところが、地図には国防のために設置された要塞(ようさい)・砲台(ほうだい)も書き込まれています。明治政府は要塞地帯が含まれる地図は「秘密地図」として一般には販売しないことを決めます。それは日本列島の約6分の1になったといいます。
それ以外は「一般地図」として販売します。地形図は鉄道敷設、港の埋め立て、市街地の拡大、地形の改変による修正が必要となるため改訂をしてきました。
地形図の成果は各地の一般市販地図にも使われ、大都市を中心に「市街図」が発行されます。明治から大正にかけて発行された地形図、市販の名古屋市街図には師団司令部など陸軍施設、陸軍直営の兵器製造所などの位置に名称が記されていますが、昭和10年代には地形図、一般市販地図ともに変化が起こります。
地形図は昭和12年以降、軍事施設の名称が消え、所在地が改描されてしまいます。また、一般市販地図は昭和16年の途中から軍事施設、兵器工場が突然消えてしまうのです。
謎解き1
昭和12年、16年と言えば何があったのでしょうか?地図から事実が消され、地図を改描させたのは?会場の展示を見て答えを見つけ出して下さい。
謎解き2
地図から消された施設・兵器工場が復活している地図が外国で作られています。しかも、固有名詞などがより詳しくなっています。さて、それは一体どこの国でしょうか?
デジタルの地図は絶えず更新されて最新情報が反映されるので大変便利です。
紙の地図では作成された時点で情報が止まっているので、最新の情報を知ることはできません。しかし、過去の歴史を知る史料としての価値があります。
昭和に発行された当時の地図で消されたり、改描された具体的な施設を探しにお越しください。