戦争で失われたいのちにこだわって◆第38回戦災・空襲記録づくり東海交流集会
戦争遺跡に平和を学ぶ亀山の会  岩脇 彰






 2022年12月11日(日)の午後、ピースあいちを会場にハイブリッド方式で、第38回戦災・空襲記録づくり東海交流会が開催されました。
 交流会でピースあいちに行くのは3年ぶりで、懐かしい皆さんとお会いできて嬉しかったです。その反面、コロナ関連で欠席されたり、オンラインへの変更をされたりした方もみえ、まだまだ油断できない状況を感じました。

 特別報告は3本で、
①「リファイニングを経て保存される鷹来工廠」(渋井康弘)では、外観は当時の面影を再現しつつ、内部は学生や職員のために快適になった建物の様子と取り組みが報告されました。建物が守られて本当に良かったです。
②「三重県の戦争調査と継承」(岩脇 彰)では、亀山市での列車銃撃や戦争遺跡の継承と、名古屋陸軍兵器補給廠に関わる戦争遺跡などが報告されました。
③「『歴史総合』で空襲を学ぶ」(矢野慎一)では、高校で始まった新科目「歴史総合」では、地域の空襲がとても良い教材になることがわかりました。地域史にこだわる大切さを教員にわかってほしいし、これまで蓄積してきた私たちの資料を教育現場で使いやすい形に組み直せないかという提起がありました。

 各地からは資料報告のみを含めて14の報告(敦賀、鈴鹿、半田、豊川、全傷連、ピースあいち、日朝協会、大垣、瀬戸、岐阜、香芝、奈良、春日井、豊田)がありました。オンラインでの報告は4本(敦賀、全傷連、岐阜、春日井)でした。大垣は資料提供のみで、発表予定だった東海は体調不良のために欠席されました。それぞれが意欲的な報告でしたが、特に心に残ったことが3点ありました。

 1つ目は、日朝協会(小出 裕)が提起された「あいち・平和の命簿」の取り組みです。命にこだわることが人道・人権の尊重や戦争抑止につながると確信して、戦争で命を落とされた方すべての名前を明らかにする活動をされています。日本の侵略戦争によるアジア2000万人のお名前もすべて明らかにするそうで、海外も視野に入れることは壮大だけど重要な取り組みだと思いました。
 亀山列車銃撃の犠牲者は少なくとも40人いると言われていますが、お名前のわかっている方はわずか9名です。全員のお名前を明らかにするのは大変困難な作業ですが、それにこだわって活動を進めたいです。

 2つ目は、奈良から2本の報告が出されたことです。
 香芝(西嶋拓郎)が報告された屯鶴峯(どんづるぼう)地下壕は、本土戦の航空特攻の司令部が入っていて、皇族が来る話もあり、長野の松代大本営に匹敵する歴史的意味を感じました。
 奈良の報告(西田 敦)は、奈良県での空襲やさまざまな疎開(仏像などの国宝、病院、工場)を紹介し、愛知県の軍需工場に奈良県民も動員されていたという事実はとても興味深かったです。奈良は東海地方との結びつきも強いので、これからも戦争記録の交流を続けたいです。

 3つ目は名古屋陸軍兵器補給廠です。春日井(金子 力)が明らかにした資料には、東海各地に作られた疎開施設の所在地が明記されていて、各地で確認されていた大規模な地下火薬庫や弾薬庫の多くがこれによるものだったと判明しました。
 今回の集会でも豊田と三重からそれに関係する報告がありました。東海交流会までの途中に、この施設に特化した交流会をしようという意見も出され、期待されます。

 限られた時間の中で充実した交流会ができました。たくさんの報告を上手に日程に収め、オンライン用のPDF資料と会場用の印刷物を用意して下さった事務局の皆さん、どうもありがとうございました。ハイブリッドの設備や技術もすばらしかったと思います。参加者は25団体・43名(会場24名、オンライン19名)でした。