2022年を振り返って
ピースあいち事務局長  赤澤 ゆかり

                                           
 

 2022年の幕開けはやはり、新型コロナ感染症への対応でした。1月21日に「まん延防止等重点措置」が始まることになったからです。検討の結果、当番ボランティアさんの数を減らし、館内での会議などにも注意喚起をして開館を続けることになりました。
 イベントについても、開催日近くになってから状況を見て判断しようということに。感染状況をみながら、何とかして開催できる方法を探していこうという合意ができました。

 

 そして2月24日、ロシアのウクライナへの軍事侵攻。「まさか私が生きている間にこんなことが起きるとは」と、ボランティアや語り手さんの嘆きが聞こえました。運営委員会でも議論して、HPにアイコンを掲げることを決定。また、友の会で「ウクライナ応援缶バッチ」を販売し、企画展にご協力いただいているチェルノブイリ救援中部にその売り上げを託しました。
 「どうして戦争が起きるのかを知りたくて」と来館される方も増えたように思います。ロシアとウクライナの戦争について直接解説する展示はありませんが、みなさんそれぞれに考えを深めてくださっているようです。
 先日、中学1年生のガイドをしていたボランティアさんが、1階の常設展示「現代の戦争と平和」のコーナーで、植民地支配から始めて(W杯での各国の活躍を絡めて、中学生の興味を引き付けていたのはさすがです!)、国連の結成など平和に向けた世界の大きな時代の流れを紹介したうえで、ロシアのウクライナ侵攻をどう考えるかと問いかけていたのが印象的でした。

 

 今の日本の状況を、先の戦争前夜に例える方もいらっしゃいます。戦前・戦中の日本はどのような空気で、国民はどう行動し、どんな法律ができ、どのように軍備を増強して、戦争への道を進んでいったのか。また、現在の政治体制とはどこが違うのか。ぜひ展示から読み取っていただけたらと思います。
 戦前との違いはなんといっても、「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」の三原則を柱とする日本国憲法ができたこと。2月からはボランティアで、憲法に関する勉強会を始めています。

 

1階のコーナーでご覧いただけます。

 ピースあいちの展示で、小さいけれど、これからに向けて大きな一歩だったかなと思うのは、館内LANシステムを構築し、画像や動画の館内視聴ができるようになったことです。
 企画展「戦時下の地震―隠された東南海・三河地震」(3月8日‐5月6日)から、会場のQRコードを読み取ることで戦争体験の語りの動画が視聴できるようにしました。以後の企画展でも、ビデオ映像や展示以外の画像、解説、紙芝居の上演など、展示の内容を深める試みをしています。
 同じく館内LANシステムを利用して、撮りためていた語り手さんの映像を20分弱に編集して、館内で視聴できるようにもなりました。また、常設展を英語で視聴できる展示をめざして「バイリンガル・プロジェクト」も発足し、翻訳作業を進めています。

 

 5月4日、ピースあいちは開館15周年を迎えました。前日に来館者90,000人達成セレモニーを行い、5日に「開館15周年 ピースまつり」を開催しました。
 そして、準常設展「沖縄戦と日本復帰50年」(5月10日‐7月2日)。この沖縄展のパネルを貸してほしいというご希望があり、その後、2か所に貸し出しました。

 

 ピースあいち夏の企画展「戦争プロパガンダ~国民を戦争に向かわせた宣伝たち」(7月12日‐9月17日)は、「『プロパガンダ』という言葉は一般的でないから」と、タイトルに説明的な副題を付けたのですが、ロシアのウクライナ侵攻でだれもが知る単語になったのは皮肉なことでした。
 長野県阿智村からお借りした戦時ポスターのほか、ふろしき研究会の戦時ふろしき、個人所蔵の戦時の駅弁の掛け紙、そしてピースあいちの所蔵品など、戦争プロパガンダで展示室をいっぱいにしました。「私はこんな雰囲気の中で軍国少女になっていったのよ」と、語り手さんの一人が話していたそうです。たくさんの方のご協力を得て、会期中1,686人の来館がありました。ありがとうございました。

 

 8月は、恒例の夏の語り(人数を制限して)、愛知県名古屋市の戦争体験を聞く会、団体や市町村への語り手・語り継ぎ手の派遣など、いつもの夏のように忙しく過ごしました。
 こうした活動を支えているのが、「語り手の会」と「語り継ぎ手の会」です。語り手さん、語り継ぎ手さん、そうした方々を支えるサポートチームの地道で継続的な活動です。戦争体験を語れる方が20名程度に減少するなか、戦争体験を語り継ぐ新世代の登場は、本当に頼もしい。現在は語り事業の約40%を語り継ぎ手が担っています。

 

指導を受けてプロパガンダ展の展示をする学生たち

 9月18日‐26日の夏季休暇の間に、外壁、シンボル画、玄関屋根の補修工事を行い、丹羽和子さん(故人)がピースあいちのために描いてくださったシンボル画がきれいになりました。
 高校や大学との連携が進んだのも、今年の特徴でしょう。大学の博物館実習の受け入れ、パートナーシップ協定は以前から実施していますが、ほかに「ボランティア・インターンシップ」の実施や高校の平和カリキュラムへの協力要請も増えており、できる限りの協力をしました。
 夏の忙しい時期、博物館実習やインターンシップの学生さんたちがピースあいちにいてくれて、楽しかったし、とても助かりました。

 

 夏休みが明けてからは、子ども企画展「戦争の中の子どもたち」「戦争と動物たち」(10月4日‐11月26日)。例年はこの時期、学校から団体で見学に来る子どもたちが多いのですが、今年は計画時にコロナ感染症の影響があったためか、ちょっと寂しかった。けれど、ゼミでピースあいちを利用してくれる大学が増えたように思います。
 そして、現在は、第10回寄贈品展「つなげていこう平和への願い」(12月6日‐2023年2月25日)が開催中です。

 

 ピースあいちは今日から1月4日まで年末年始の休館。5日には開館して、みなさまをお待ちしています。
 来年はどうか、良い年になりますように。