企画展「沖縄戦と日本復帰50年」によせて
ボランティア 東村 岳史
沖縄に関する展示は、開館以来ピースあいちがくりかえし取り組んできた企画の一つです。2022年は1972年に沖縄が日本に返還されてから50年に当たることから、日本復帰後の沖縄の歩みを多面的に紹介することにしました。
近代以降、いわゆる「琉球処分」によって日本に編入され、またアジア太平洋戦争後は米軍占領下に置かれた沖縄にとっては、「返還」も「復帰」も複雑な意味合いを持つ言葉です。現在は復帰を肯定する沖縄県民が大多数ではあるものの、米軍基地等の問題を抱えているだけに、人々は単純にこの50年を肯定しているわけではありません。
5月7日に沖縄県が玉城デニー知事名で発表した「平和で豊かな沖縄の実現に向けた建議書」は、「50年前の本土復帰当時は、沖縄県も日本政府も『沖縄を平和の島とする』という目標を共有していたと認識しております」とした上で、「復帰時において、沖縄県と政府が共有した『沖縄を平和の島とする』目標は、50年経過した現在においてもいまだ達成されていないと言わざるを得ません」と現状について批判的に述べています。
この建議書で示されている沖縄県の見解を理解するために必要と思われる重要事項を今回の展示では強調してみました。これまでに作成した沖縄戦と戦後の沖縄の歩みに関するパネルに加えて、新たなパネルとして「1沖縄戦・教科書裁判」、「2基地・日米地位協定」、「3沖縄経済」、「4騒音・環境問題」、「5芸術、文化、スポーツ」、「6選挙・知事選・衆院選」、「7民意・県民大会・県民投票」、「中学教科書に見る『沖縄の本土復帰』」、「沖縄県と愛知県のつながり」を追加、フォトギャラリーでは沖縄の復帰運動の様子や復帰運動に密接に関わった政治家等の写真が展示されています。
米軍基地をはじめとする多くの問題が沖縄にしわ寄せされているのは、日本政府やヤマトゥンチュの責任が大きいということがおわかりいただけるでしょう。その意味で、復帰50年という節目の年にだけ一過性の関心を持つのではなく、ヤマトの人間が継続して沖縄の現状を「自分ごと」として考える機会となることを願っています。
50年が経過してなお、「沖縄を平和の島とする」目標に依然として程遠いのはなぜなのか、復帰後現在に至るまでの間に何が変わり、何が変わらなかったのかという問いに答えるための手がかりを展示から読み取っていただければ幸いです。