猪高中学校生徒の平和新聞~ピースあいちを見学して◆プチギャラリーで展示
ボランティア 高橋 よしの
猪高中学校の生徒の皆さまと先生方のご厚意と協力で、『平和新聞』を「ピースあいち」に展示することになりました。1、2年生作成の321点から、64点を選び、前期(1/25~2/12)・後期(2/15~3/12)に分けて半分ずつ展示します。
新聞には各自が取材し、考えたことが凝縮され、作品それぞれに独自の題名がつけられています。「みんなで学ぼう戦争新聞」「見てそんしない新聞」「今につながる戦争新聞」「2度とくり返したくない暮らし新聞」「忘れない…。未来につなぐ戦争新聞」「かたりつがれる名古屋の戦争新聞」「學徒新聞」「疎開新聞」「平和祈念新聞」「戦争を考える新聞」・・・など、ぜひ会場でお確かめください。タイトルが様々あるように、中学生が自分なりに展示と対峙し、感じ、気づき、自分の考えを一枚の新聞にまとめあげました。
指導された西田義弘教諭は、「ピースあいち」を訪問し取材したことをオリジナルの新聞に作り上げる機会を生徒たちに経験させたいと、この取り組みを始めたといいます。社会科の教諭にも話し、1、2年生ともに夏休みの課題としました。
夏休み中、1、2年生の生徒たちはお友達同士でまたご家族といっしょにピースあいちを訪問してくれました。私が展示室の係の時にいくつかのグループが来ました。はじめは、どんな所だろうと興味ありげな面持ちで会話もしていましたが、次第に黙り、メモを取っていく姿が見られました。そこには、人を寄せ付けないような真剣さが…。
常設展示の「焼き場に立つ少年」の写真の前にずっと立って見ていた中学生は、その後、写真を撮ってもいいか恐る恐る尋ねてきました。いくつか気を付けてほしいことを伝えると、少年はまっすぐ目的の被写体のところへ向かいます。
15年戦争の展示について話す父親のそばにピタリとついて聞き入っていた男の子。その後、『少女たちの戦争』展のある3階へ二人で上がっていきます。
愛知県下や三菱重工業の空襲の資料などをメモしていた二人の少年が、展示品を指さして「これ何?」と聞きました。原爆ドームの廃墟の鉄製模型だと答えると、「そうかー」とため息。よくできていると言い、写真に撮っていいいかと聞きます。夏休みの宿題のために来ていることは知っていましたが、あえて聞くと、「そうだよ」と屈託なく答えました。
夏休み後、西田教諭から作品10点が「ピースあいち」に届きました。一枚一枚がオリジナルの新聞に作りあげてありました。それぞれの、思いや、気づきが書かれています。今の中学生は戦争とどのように向き合うのだろうと思う私は、あの夏休みの取り組みがこのように結実したことを目前にし、感慨深いものがありました。
展示用にお借りした321点を通して思うのは、それぞれの生徒が空襲の資料や写真、当時の暮らしなどの展示を見ることで、それぞれの気づきが確かにあったということです。そして、家に帰り家族に話したり聞いたりの経験をも通し、自分の考えに深めていっていました。中学生が展示物を見ながら、「戦争」について自分の考えを深めていく機会を持ったことは確かでした。
マンガ「はだしのゲン」作者の中沢啓治氏が中高生と座談会をする機会に同席することがありました。その時ある生徒が「二度と戦争はくりかえしてほしくないです」と言いました。すると中沢氏は言下に「くり返して“ほしくない”ではなく、くり返さないとう意志を持つことです」と、静かに話しました。中沢氏のように優しく、明確に胸に届く言葉を伝えてきているのかと自問がよぎる。と、同時にこれからを生きる子どもたちが、平和な世の中を作る一人ひとりになっていくことを願う。
「戦争」の資料や展示を直接見、聞き、考える機会を持つことの大切さをこの中学生の夏の経験を見て改めて思う。どうぞ、「ピースあいち」ギャラリーへ足をお運びください。