第9回寄贈品展によせて◆創る楽しみ
ボランティア 川越 敏行
今、当館3階では寄贈品展を開催しています。この寄贈品展は市民の皆様からこの1年間に寄贈された、戦争と平和に関する品々を展示するものです。展示の準備は例年7月頃から始め、12月の上旬に開催を迎えますが、その準備の様子をご紹介したいと思います。
寄贈品を前に(左から2人目が筆者)
準備の主な内容は次のとおりです。
① 目録の作成
寄贈品を一覧にした目録を作成します。寄贈品を、いつ、誰が、どのように使用したかが分かるよう、寄贈者ごとに説明文も入れます。
② ちらしの作成
展示会の開催を知らせる広告(ちらし)を作成します。例年、寄贈品の中から広告に載せる寄贈品を選び、その写真を載せます。
③ 展示作業
寄贈品をパネルに入れて壁に吊るしたり、机や展示ケースに置く作業です。寄贈品を紹介するパネル(キャプションと言う)も作成します。
④ オープニングイベント
開会初日、寄贈者から来館者に直接、寄贈品の来歴やエピソードを話していただく機会です。これに参加してくださる寄贈者の人選や来館の依頼を行います。
今回の寄贈者は26人。これを資料班のなかで分担して、展示に向けて準備します。私は5名の方々の寄贈品を担当しました。前述した準備の内容に沿って、私の準備の様子をご紹介します。
会場でお配りしている「目録」
① 目録の作成
寄贈者に電話で連絡を取り、寄贈品の来歴やエピソードをお尋ねします。
戦前の絵葉書を寄贈していただいた方は、年配の方でしたが、きりっとした話し方で、世が戦時体制に移って行く様子を思い出しながらエピソードを語ってくださいました。次に、聞き取ったことなどを文章にまとめます。正確を期するため、語句や使用された年代などを本やインターネットで確認します。
例えば、『輜重兵(しちょうへい)』。寄贈された軍隊手帳に書き込まれていたものですが、聞き慣れない言葉で、調べてみると「旧陸軍の職務区分のひとつで、食料や武器弾薬を前線部隊へ輸送する任務を担った」とありました。寄贈者の父が満州(現:中国東北部)へ出征されましたが、この任務を担って出征されたことがわかりました。
時間がかかりますが、大変勉強になります。
② ちらしの作成
ちらしに載せる寄贈品の一つに、私の担当した寄贈者の寄贈品が選ばれました。
展示中の硬貨
③ 展示作業
来館者にわかりやすく見ていただけるよう、展示の仕方を工夫します。今回、戦前の硬貨の寄贈がありましたので、作られた年代順に並べてみたところ、終戦の年(1945年)に近づくほど、硬貨の大きさが小さくなり、材質も、入手が困難になってきた銅やニッケルからアルミニウムや錫(すず)を使ったものに変わってきているのがわかりました。これは私にとって大きな発見でした。
④ オープニングイベント
オープニングイベントには3組の寄贈者に来ていただくことになりました。
そのうちの一組が私の担当した寄贈者の方でした。この方の夫は終戦直後、朝鮮半島からの過酷な引き揚げを体験し、手記に残した方ですが、同じ体験をした夫の姉妹も参加してくださり、お話を伺いました。
「当時、満州や朝鮮半島から引き揚げる日本人が多いなか、途中で亡くなる人も多く出て、地元では、冬には土が凍って埋葬する穴が掘れなくなるので、夏の間に掘って冬に備えたそうです。また、地元の日本人世話人会の支援がなかったら、私たちは死んでいたでしょう。」など、過酷な引き揚げの状況を話してくださいました。
まとめ
寄贈品展の準備をするなかで、寄贈品の来歴などを詳しく調べる必要が出てきたりします。時間もかかりますが、勉強になります。寄贈者とお話しする機会もあり、戦争体験を伺ったりすると、戦争や平和に対する考えが深まるように思います。
皆様も寄贈品展の創り手になってみませんか。