2021年・企画展「沖縄から平和を考える」によせて
名古屋市立大学教授 阪井 芳貴

                                           
 

 いま(というのは2021年6月15日)沖縄をめぐって、深刻な問題が幾重にも絡み合っています。みなさんご承知のように、新型コロナ感染状況が日本国内で最も深刻なレベルを維持し続けています。数日前には、このコロナ禍により、沖縄県の「貯金」が97%も減ってしまったという報道もありました。
 実は、この3月にこっそり沖縄を訪れたのですが、あの国際通りがゴーストタウンのようになっていて、我が眼を疑いました。コロナによる経済の打撃は未曾有、計り知れない規模に及んでいることが実感されました。

 さらに、まさに現在、国会では「安全保障上重要な施設の周辺などの土地利用を規制する法案」の成立が強行されようとしています。
 この法案が施行されると、国家権力がフリーハンドで基地周辺の住民たちを監視し、土地の利用を制限することができるようになりかねません。沖縄県民のほとんどが、事実上、その対象になってしまうのです。酷い話ですが、この法律の適用の先駆けのような事案が先週起こってしまいました。

 やんばるで蝶を中心に動植物の生態の調査研究に携わる宮城秋乃さんが、米軍が訓練に使用してそのまま放置した薬莢などを収集し米軍基地に運んだ際の行為が威力業務妨害に当たるとして家宅捜査され、PCなどを押収された「事件」です。
 沖縄県警の捜査は、まったくもって理不尽としか言いようがありませんが、こうしたことが今後頻発するかもしれません。そして、それは決して人ごとではないのです。

展覧会場の様子1

ゼミの学生に展示解説する筆者(左)

 「本土」復帰後の沖縄県の置かれた状況は、まさにこうした理不尽なことがらの連続でした。ですから、復帰とは何だったのか、復帰して良かったのか、という問いかけ・問い直しが何度も何度も繰り返されてきました。おそらく、来年の「復帰50年」には1年を通してそうした動きがいっそう盛り上がると想像します。
 さらに、さかのぼれば、近代沖縄の始まり、すなわち「琉球処分」から沖縄は常に理不尽な扱いを受けてきたことを歴史は語っています。そして、その最たるものが沖縄戦であったと私は考えます。

 今年の企画展「沖縄から平和を考える」は、まさにこの近代以降の沖縄の置かれた状況、たどった歴史を振り返り、沖縄戦の背景にあったことがらと沖縄戦の実相、戦後の苦難が把握しやすいように練られた展示です。そして、それはこの十年余り、ピースあいちが取り組んできた沖縄企画展の総仕上げ的な内容でもあるのです。
 また、2階のミニ企画では、首里城の歴史と焼失を伝える「琉球新報」紙の号外、そして復興に向けた現状の写真を展示しています。いずれも私が提供した資料・写真を用いた展示です。特に、昨年12月に撮影してきた写真から、再建に向かう確かな足どりを感じていただければ嬉しく思います。