語り継ぎボランティア研修会◆今回のテーマは「語り継ぎの先輩から学ぶ」
3月21日、5回目の研修会が行われました。コロナ禍のため2月の研修に続き、今回もオンラインでの会となりました。テーマは「語り継ぎの先輩から学ぶ」。
すでにピースあいちの語り継ぎ手(リボンの会会員)として活動している原田和果さんと中村桂子さんにお話をお聞きしました。参加者は事前にお二人の語り継ぎの様子をVTRで見ていましたが、初めに15分ほど語り継ぎを実演していただき、その後、“対象とする証言を選んだ理由”“VTRの活用など構成の工夫”“実際の話し方の工夫”など、話していただきました。
参加者からは、「実際の“語り継ぎ”を聞かせていただき、体験者への思いやシナリオ作りの工夫、苦労も知ることができ、とても参考になった。」などの感想も出されました。
〈原田和果さん〉
戦争中、女の子の憧れだった従軍看護婦になって戦争を体験された杉本初枝さんのお話を語り継ぐ原田さん。
「戦争の中で女性がどういう思いで生きてきたのか、人を助けたいと看護婦になった杉本さんの体験を伝えたいと思いました」。
・杉本さんはすでに亡くなっており、直接お話を聞くことはできませんでした。残された語りのVTRを見、手記も読み、そこに込められているメッセージを読み取り、杉本さんに近づく努力をしたいと思った。
・証言はどの部分もとても重要であるのだけれど、その中でもどこが最も大事か、どの部分を活用するか。30分から40分という制限の中でVTRばかりでは語り継ぐ意味がない。VTRの活用部分と語り継ぎ手の言葉で伝える部分を決め、周辺の状況などを調べた。
・まずはシナリオを思うままに書いて、読んで時間を計り、構成を考えた。貴重な証言をきちっと伝えるために、組み立ては何度も修正を繰り返した。
・最後の部分で杉本さんが一番訴えたかったことを繰り返す、そして語り継ぎ手の私の思いを伝えるという構成にした。
・話す場合は、実際のイメージを思い浮かべながら、でもそれだけでは重いのでテンポアップするなど、工夫がいる。演じる語り(朗読)部分と語り継ぎ手私の話し方、その両方が必要かもしれない。
〈中村桂子さん〉
中村桂子さんは、現地住民を巻き込んだ地上戦が行われた沖縄で兵士として戦った父・日比野勝廣さんの戦争体験を語り継いでいます。
「父はとても大きな負傷をするのですが、奇跡的に生きて帰ることができました。85歳で亡くなりましたが、“戦争はこわいぞ。僕の戦争を語り継いでくれ”と言って亡くなりました。父の戦争体験を伝える中で戦争の悲惨さと平和の大切さを伝えたいと、語り継ぎ活動をしています。」
・幼いころから父の戦争体験を聴くことができた。小さい頃は分からなかったことも多かったけれど、父の“戦争体験の語り”に付いていったり、いっしょに沖縄へ行く中で、父の思いをしっかり受け止めるようになってきた。
・自分が大けがをしたことが心の傷になっていると思っていたが、自分の命令で部下を死なせた、このことが父の心の中に大きな傷となって残っているのを知った。
・命を救ってくれた沖縄の人に会わせたいと、家族そろって沖縄に行こうと誘われた。父がいたガマなど現地をいっしょに見て、当時の光景がせまってきた。
・戦争体験の語りや語り継ぎは、歴史の学習ではない。しかし、“戦争はこわいよ”という体験者の思いは、“戦争”の状況説明がないと分からない。体験者に寄りそい、自分の問題として受け止めてもらう工夫がいる。
・お話の最後は、「私は父からバトンを渡された、今日はみなさんにぜひバトンを渡したい」と締めくくっている。