一年を振り返って
事務局長 赤澤 ゆかり

                                           

 戦後75年の2020年は、ピースあいち開館の2007年と同じように、忘れられない年になるでしょう。年の初めには考えもしなかったことが、次から次へと起こりました。

 

 まず、現在も感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症。開催していた企画展「原爆の図と大津定信展」の関連イベント「ギャラリートーク」(2/29)を中止したのが最初の対応でした。私たちも大津さんのお話を楽しみにしていたので残念でしたが、愛知県内の急速な感染拡大をふまえてのこと。

 

 そして、3月1日に野間美喜子前館長が急逝されます。あまりに突然の訃報に、この事実をすぐに受け入れることができませんでした。
 しかし、感染症の拡大は続きます。毎年開催してきた「名古屋空襲犠牲者追悼の夕べ」(3/14)は中止し、お当番のボランティアだけで法要を執り行いました。そして、ボランティアの安全のためにお当番の人数制限、館内の体験談やガイドなど団体対応の中止へ。

 

 ついに4月4日以降は、臨時閉館することになりました。4月7日から開催予定だった企画展「模擬原爆パンプキン―市民が明らかにした原爆投下訓練」は展示作業も済み、オープンを待つばかりでしたが、そのまま館は閉じられました。
 未知のウイルスにどのように対処したらいいのか、明確な指針のないまま、事態の変化を見ながらその都度運営委員で話し合い、宮原館長が決断しています。館長は大変な心労であろうと思います。

 

 感染防止策を講じたうえで開館したのは6月9日。その間、さまざまなボランティアの活動も中止したため、予定していた企画展の開催を組み直さざるを得ませんでした。6月のNPO総会も、今年は書面による議案の提案、返信ハガキによる採決で開催しました。
 野間前館長の「お別れの会」も開けないままで、総会時に会員のお一人から、「もっとしっかりした対応をすべきではないか」というお手紙をいただいたほどです。ありがたいご叱責でした。
 遅くなりましたが、来年には「偲ぶ会」の開催、「追悼文集」の作成、「野間美喜子記念文庫」の設置を計画しています。

 

 野間前館長と高校の同級生でボランティアもしていただいていた夫の野間宏さんが11月12日に、ピースあいちを開館前から支えてこられた「語り手の会の前代表」の齋藤孝さんが11月26日に相次いで亡くなり、寂しい想いで胸がつまります。

 

 今年、恒例の「夏の語り」は初のオンラインで行いました。これは、開催する側として貴重な経験であったと思います。その後、団体や学校などからの依頼で、オンラインで戦争体験の語り事業も行うようにもなりました。

 

 また、今年は「戦後75年プロジェクト」として、「戦争体験集の作成」「映像アーカイブの作成着手」「語り継ぎ手ボランティアの募集と研修」の3つの柱を掲げ、現在、オールピースあいちの体制で進んでいます。「映像アーカイブの作成」は、すでにピースあいちのさまざまな場面で活用が進んでいます。
 夏に募集した「語り継ぎ手ボランティア」は予想以上の応募があり、当初の予定より大勢の方にボランティアになっていただきました。(コロナ禍で全員の方になっていただけなかったのが悔やまれます。)みなさん素晴らしい方ばかりで、これからのピースあいちを担う大きな力になっていただけると、期待を寄せています。

 

 延期になった企画展も、「名古屋空襲展」、「福島を忘れない」、「戦争とスポーツ展」、準常設展「沖縄展」、夏企画「少女たちの戦争展」が、若いボランティアの発案・参加を得て、着々と準備中です。ご期待ください。

 

 今年は大変な年でしたが、12月には探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウの試料が入ったカプセルを帰還させ、自身は100億キロかなたの小惑星に旅立ちました。研究者から町工場の職人さんまで、たくさんの人の夢と技術と情熱が集結して成し遂げた事業です。
 はやぶさ2が最後に撮影した地球の美しかったこと! この地球を大切に次の世代へ、また次の世代へと手渡していくために、ささやかだけれど、いま自分ができることは何か。これからもピースあいちの仲間たちといっしょに考え、行動していきたいと思います。
 来年がみなさまにとって、良い一年となりますように。



◆今年開催した(開催中の)企画展
・3階企画展示室
「第7回寄贈品展-時をつなぐモノたちの声」 (2019/12/7~2020/1/25)
「原爆の図と大津定信展―核兵器のない世界のために」(2/4~3/28)
「模擬原爆パンプキン―市民が明らかにした原爆投下訓練」(6/9~8/29)
〈9月は館の補修のために1か月休館〉
「戦争の中の子どもたち」「戦争と動物たち」(10/6~11/28)
「第8回寄贈品展 伝えていこう戦争の記憶」(12/8~2021/2/27)
・2階プチギャラリー
写真展「ピースあいち近くの 平和公園で観られる野鳥たち」(6/9~7/11)
「15歳の語り継ぐ戦争―金城学院中学生の平和新聞」 (7/21~8/29)
「飢餓のない世界を! 2020年ノーベル平和賞受賞―国連WFP(国連世界食糧計画)の取り組み」 (12/5~2021/1/30)