コロナ禍での博物館実習
ピースあいち嘱託学芸員 岡村 裕成
新型コロナウイルスの流行で危ぶまれた今年の博物館実習でしたが、スケジュールを変更、延長しつつ無事に行うことができました。
今回はこれまでのピースあいちの博物館実習の内容を知って実習先として決めてくれた学生もいたので、コロナ禍とはいえ、これまでの実習内容を100パーセント実施できなかったことは反省だなと思います。それでも、実習に参加した学生はそれぞれ柔軟に対応してくれました。
新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が出され、美術館なども休館という影響で当初の実習先が中止になり、急遽ピースあいちの実習に参加した学生。彼女は美術館メインの学芸員授業を受けてきていて、博物館や資料館での実習は不安もあったようですが、
「(ピースあいちで)普段ガイドをされている方々が、限られた時間でガイドをするために、内容をおさえてガイドをしていることが分かった。皆さんの知識量がすごくて、自分の卒業論文を書くことに気合が入った。」
と感想を話され、自分の専門外からでも自分の研究につながる発見をしてくれました。実習の在り方としては成功だったのではと思いました。
これまでとはまた違った視点で実習に参加してくれた学生もいました。
「ピースあいちは民間の施設で資金が少なく大変ではあるが、博物館の資料『保存』という役割を考えなければならないと思った。資料班の方から保存のすべてを細かく聞いたわけではないので一概には言えないが…」
と、ピースあいちで行っている資料保存について指摘をしてくれました。
これまで実習では教える、指導する側だったこちら側としては、この指摘は新鮮で、ピースあいちでの資料保存について検討の余地があることや、受け入れしている学生の基本的な知識や引き出しが増えているなと感じました。
また、実習を通じて学生が成長しているということも感じました。毎年、ピースあいちの博物館実習の課題にピースあいちの展示ガイドを行うというものがあります。ガイド実習では、ある学生から、
「メモばかり見ないことを一番意識したため、そこを評価されたことは非常に嬉しかった。もう少し写真やものを使えたら…。次回人前で発表する機会があれば、今日のことを活かしたい」
と感想があり、次の成長につなげてくれそうだなと思えました。
その他にも、
「自分の企画展発表はほかの方の発表に比べると、学校の教育指導要領や学年を考えすぎて学校教育との関連に寄せ過ぎていたと思う。博物館は生涯学習の場でもあるので、対象年齢が高い人でもつまらなくない展示ガイドにしたい」
と反省を述べ、次につながる学習をしてくれたので、これもまた学生の成長をサポートできたのではないと思いました。
制約が多い中での今年の実習は、来てくれた学生にこれまでと変わらず、いやそれ以上の対応と成長、そしてピースあいちにも新たに視点を与えてくれたと思います。この経験を今後に生かしつつ、来年は制約のない博物館実習ができることを願います。