◆この夏、「あとかたの街」がテレビ番組に!
運営委員 熊本 亮子

                                           
 

 ピースあいちではおなじみのマンガ家 おざわゆきさんの著作「あとかたの街」が、8月14日(金)NHK BSプレミアムで夜9時59分から『ドラマ×マンガ「あとかたの街~12歳の少女が見た戦争~」』で放送されます。以前から、ドラマか映画になるといいのにとスタッフ同士で話していたので、このとびっきりの知らせに「おおっ!」と沸き立ちました。戦後75年になる今年の夏は、名古屋空襲を生き抜いた主人公あいちゃんのストーリーを、もう一度手元に引き寄せてみませんか。

展覧会場の様子1

 

 「あとかたの街」は、当時12歳だった母親の名古屋での戦争体験を作品に描いたマンガです。戦後70年の2015年にレディースコミック「BE・LOVE」(講談社)に連載されて話題になり、第44回日本漫画家協会大賞を受賞しました。おざわゆきさんは名古屋空襲を描くに際し、執筆前からピースあいちへ取材で訪れていました。その時はいつも物静かで目立たなく、後にこんなにも素晴らしい作品を生み出されるとは思いもしませんでした。
 おざわゆきさんは、あいちゃんの目を通して「戦争が普通の生活の延長線上に起きた」ことを描きました。生活が次第に戦争に取り込まれていき、食料が乏しくなり好きな卵焼きが食べられなくなったり、友だちとの関係がこじれたり、大切な人が空襲の犠牲になってしまう。「戦争の悲惨さ」、とはよく言いますが、戦争を知らない世代に向けて、戦争を過去のものとして片付けてしまわないよう、身近に引き寄せて考えてもらいたいと思ったそうです。

 

 私も見学者に展示ガイドをしていると、名古屋で空襲があったことを知らない世代が多くなっていると感じます。「愛知の空襲」で始まる常設展で、まず目に飛び込む大きなモノクロ写真は、名古屋市東部を襲った米軍爆撃機B29により焼夷弾が落とされ、街に炎があがる光景です。この5日前1945年3月19日、あいちゃん一家が住む名古屋市中区に深夜、焼夷弾が降り注ぎ、家は燃え上がり、家族は焼け出されました。モノクロ写真には写っていませんが、地上には逃げ惑う人々、犠牲になった人たちが大勢いたのです。戦争経験のない世代には、マンガがイメージを引き出してくれるのに役立ちます。
 ピースあいちの名古屋空襲展では、マンガの連載中から講談社のご協力のもとに3回にわたって企画展を行いました。「マンガになった名古屋大空襲 複製原画展(2014年)」「知っていますか?この街に爆弾が降った(2015年)」「この街が焼かれた―あとかたの街が描いた名古屋大空襲(2016年)」です。毎回おざわゆきさんが来館してくださいました。2017年5月のピースあいち10周年記念パーティにもお越しになって祝辞をいただきました。
 こうした接点は、ピースあいち次世代交流チームに引き継がれて、「あとかたの街を歩く」という企画になりました。これは、あいちゃんが空襲で逃げた名古屋市内を実際に歩いてたどってみよう、というものでした。今では当時の面影を残すのはほんの数か所でしたが、空襲直後の混乱する焼けた街を、マンガのページをめくりながら想像して歩いたそうです。

 

 さて、番組はマンガを織り交ぜながら進行するドラマ仕立てで、おざわゆきさんは木村多江さん、母・あいは吉行和子さん、編集者役は桐山漣さんが演じます。
 番組を見た後、「なぜこんなひどい空襲があったのかしら」「日本がどんな戦争をしたのかしら」と何かしら疑問が湧いたら、ピースあいちへどうぞ足を運んでください。たくさんの実物資料や解説パネルが理解の助けになることでしょう。

 

 (「あとかたの街」コミックを販売しています。残りわずかです。)