2019年度博物館実習~日本近現代史専攻以外のアプローチ~
ピースあいち嘱託学芸員 岡村 裕成

                                         
 

 ピースあいちが博物館相当施設に認定されてから9年が経とうとしています。博物館相当施設になると、大学からの博物館実習を受け入れることもでき、ピースあいちでは今年も3名の学生の博物館実習を受け入れました。

絵はがき

講義を聞く

 ピースあいちに来る実習生は例年、日本近現代史、特にピースあいちが扱う15年戦争に関する研究をしている学生が多いのですが、今年は畜産マネジメント及び博物館の運営、日本近世史、東洋現代史と、今まで以上に専攻が幅広い特徴がありました。なので、日本近現代史への知識は未知数な一方で、これまでとは少し角度を違えた考えや発言、発想を垣間見ることができ、実習している側としても勉強になることが多々ありました。

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展示実習

 講義の質問では、博物館の運営につながる展示構成へ踏み込んだ質問であったり、戦時中の満州国における商売の競争率の質問であったりと、単なる15年戦争への理解だけではない、角度の少し違う質問が出ていました。また、展示活動の経験もある学生もいて、積極的にそれを活かして行動する一方で、経験したことない展示方法についてもすぐに理解して積極的に行うといった柔軟性も見えました。

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2階展示室でガイドの実習

 実習における課題として、企画展の提案と自分の選択したコーナーのガイド発表を行いましたが、こちらも幅の広い、工夫を凝らした課題発表になりました。
 ガイド発表では、日付によって異なる特徴を持つ名古屋空襲の説明をするために展示物を十分に活用、原爆の被害について説明するために自分で別途準備した被爆者の写真を紹介、そして自ら蓄積した歴史学以外の分野からの引き出しを使った戦争協力についての説明と、ガイドする相手に伝えやすくする工夫がされていました。
 企画展案の発表では、この実習で学習して興味を持った名古屋の戦闘機工業についてであったり、戦時における広告の活用による戦意高揚活動に関する展示、そして沖縄戦を実物・史実・絵画・証言といった展示活動で網羅しきれる限りの方法で紹介する企画展だったりと「戦争と平和の資料館 ピースあいち」の枠をうまいこと活かしつつ、超えつつの企画展を発表してくれたかと思います。改善の余地があるとは思いますが、過去の企画展では学生の発表してくれた提案をベースにした企画展もあるので、それにも生かせるのではないかと思いました。
 来年もまた実習をすることになると思いますが、「戦争と平和の資料館 ピースあいち」の新たな継承の可能性を見つけ、そして若い世代へのピースあいちの発信として新たな形を作れてきたのではないかと思います。以下は実習に来た学生の感想の抜粋です。

「(博物館の展示について)学芸員による説明やガイドを行っていく必要があるが、説明のし過ぎや答えを与えすぎてもいけないと感じた」
「(戦争体験を語り継ぐ体験談を聞いて)この戦争体験などを実際に経験者の方から語り継ぎ、それをたくさんの人々に伝えるということの大切さは何なのかを考えさせられる、そんな体験をさせていただきました」
「(水木展準備をして)学芸員の方だけでなく、ボランティアの人とも協力して行い、休憩の際にはさまざまな話をすることができてよかったと思う」