◆所蔵品から◆資料ナンバー9342 軍用犬に関係する資料の話
資料班
「軍用犬」昭和17年(1942年)5月発行
ピースあいちに最近寄贈された資料です。「軍用犬」という文字が目立つ冊子を見つけました。
今月は軍用犬に関する資料をご覧いただきます。
社団法人帝国軍用犬協会発行の「軍用犬」という月刊誌です。これは第十一巻・第五号。昭和17年(1942年)5月発行です。
表紙と裏表紙を並べてご覧いただいています。裏表紙は「協会発行の書籍其他(そのた)」です。
たとえば右端の欄は「解説と写真 独逸シエパード犬 全五巻 一五一二頁 定価二十五円 送料 内地五十銭領土一円二十銭」。
シェパードだけで全5巻。5冊で25円。(この冊子「軍用犬」は1冊で65銭、100銭で1円です。)ジャーマン・シェパードを、独逸(獨逸・ドイツ)シェパードって呼んでいたようです。ジャーマン・シェパードは今でも警察犬に使われています。
「軍用犬」昭和17年(1942年)5月発行
「ドーベルマンピンシエル 七」という記事の中の解説図をご覧いただきます。
現在の警察犬でも、戦時中の軍用犬でも、シェパードと並んでよく出てくる犬種がドーベルマンです。
体の大きさとかバランスとか、どういう形がドーベルマンとして「正しい」のか、ということが書いてあります。「展覧会」(ドッグショー的なもの)で、減点されないのはこういう形、というような意味で、「正しい」という言葉を使っているようです。「正しさ」の中には軍用犬としての活動に関係ないものも多そうです。
背骨がこういう形だと筋肉が弱っているとか、そういうのはあるかもしれないけれど、顔の形がどれほど働きに影響するのだろうかと思ってしまいました。
目の色はなるべく濃いほうがいいんだそうです。
シェパードとドーベルマンのほかに、エアデール・テリアも軍用犬として使われていました。この「軍用犬」にも載っています。エアデール・テリアも現在は警察犬として働いています。
帝国軍用犬協会は、日本警察犬協会の前身にあたります。
血統書
血統書です。
3代前、曽祖父母まで載っています。
裏面の、「社団法人帝国軍用犬協会の趣旨」の最初のところをご覧いただきたいと思います。「如何(いか)に科学が発達しても我が大和魂と共に日本刀は必要であり、又(また)活兵器として馬や犬は益々重要性を加えつつある」と書かれています。「活兵器」は、生き物の兵器というような意味でしょうか。(生物兵器というと細菌兵器みたいだし…。)
通信が破壊されたときに任務をまっとうするのは「吾々(われわれ)の愛する軍犬なのであります。」という文もあります。軍用犬は伝令に使われていたようです。
この文章の最後のほうには「国家的意義を有する紳士の倶楽部」という表現もあります。
軍用犬協会は、軍の組織ではなさそう。「紳士の倶楽部」という表現には遊び心も感じられます。民間で育てた犬を審査して軍用犬として召し上げる、というシステムがあったようです。
警察犬でも、民間で育てる嘱託警察犬というのもあるのですね。
「軍用犬」 その後の種犬認定合格犬
育てるだけではなく、繁殖とか交配も行われていました。
冊子「軍用犬」に戻って、「種犬」のコーナーです。交配・繁殖用の犬ですね。牡(おす)も牝(めす)もこのコーナーに載っています。
今回の記事を書くのに、公益社団法人日本警察犬協会のホームページを参考にしました。
詳しい画像はこちらからどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/pdf/20190724_gun-you-ken.pdf
ピースあいちウェブサイトの、所蔵品の紹介のページからも、バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/objects/