◆所蔵品から◆資料ナンバー8515 「応徴士訓練必携」愛知時計電機株式会社発行 の話
資料班
応徴士訓練必携
現在の「熱田空襲」企画展に展示されている資料「応徴士訓練必携」をご覧いただきます。愛知時計電機が、動員した学生に配った小冊子です。愛知時計電機は6月9日の「熱田空襲」でおおきな被害をうけています。
「応徴士」というのは、徴用に応じた人、という意味です。この小冊子は、学徒動員で、愛知時計電機に行くことになった学生さんに渡されたものです。
この小冊子はコピー機に伏せて置くのは難しそうなので、下からも支え、無理のないように開いた上に透明の板を置いて写真を撮りました。透明版の反射が入って見苦しいところもありますがお許しを。
目次
目次をご覧いただきます。
教育勅語・宣戦の詔書・軍人勅諭……と続いて、朝夕の食事の前後に唱える(?)標語というか文句が続きます。
その後の「敬礼挙措」「死生観」は、戦陣訓のダイジェストです。
応徴士服務規律・工員従業規則と続き、巻末は社歌です。
14・15ページ 食前の詞
中身を見ていきます。(引用している部分の旧漢字や旧仮名遣いを新しいものにしてあります。)
「食前の詞」のページです。朝食と夕食があるのですが、仕事場での食事って昼ごはんというイメージですよね。寮での食事なのでしょうか。
天皇(朝食の詞に出てくる「君」)や兵隊や親に感謝して味わって食べましょう、というような内容です。
夕食のほうは「身も心も健やかに御国の為に働きます」と締めくくられています。
工員従業規則
工員従業規則のページです。
第二條(第2条)に「国体の本義に基き」、第3条の1では、「軍事上の機密及び事業上の秘密を厳守すること」と、戦争中に軍用の飛行機を作っていた工場ならではの言葉が出てきます。次の項は上司の指図に「欣然従うこと」。欣然(きんぜん)は「よろこんで」という意味です。今の会社でもこういう規則あるのでしょうか?
工員従業規則
休日です。
日曜と年末年始(12/31-1/3)、そのほかは
紀元節(2/11)、天長節(4/29)、明治節(11/3)、新年宴会(?)、神武天皇祭(4/3)、春季皇霊祭(春分の日)、秋季皇霊祭(秋分の日)、神嘗祭(10/17)、新嘗祭(11/23)、大正天皇祭(12/25)、尚武祭(6/5 熱田神宮のお祭り)、会社決算当日 となっています。
減給又は有給慰労休暇制限
「該当する者は減給又は有給慰労休暇制限に処す」のリストの一部です。
八、の項目で「落書を為し」とあります。らくがき禁止って子供みたい、と思ったのですが、「落書」の後を読むと「書類印刷物等」の「領布」、「貼付」と続くので、壁を汚すなというよりも良からぬ考えを広めるな、という方向の禁止事項なのかと思いました。
もう少し調べてみたら「落書」と書いて「らくしょ」、落とし文(ぶみ)や貼り紙の無記名の文書のことも言うらしい。壁にいたずら書きよりも、そっちの意味でしょうか。
次の九番では団体の組織、集会、演説が禁止されています。禁止というか、減給又は有給慰労休暇制限に処す、です。ちなみに有給慰労休暇は1年働くと3日もらえます。6か月間皆勤だとさらに2日有給精勤休暇がつきます。
規則なんてそんなものかもしれませんが、難しい漢字がたくさん使われています。
「苟も」 「竊に」 「擅に」
当時の工員の皆さんは、これを読んでたんでしょうか。
(読み方はこの記事の一番下にあります。)
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http://www.peace-aichi.com/pdf/20190323_ouchoushi.pdf
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http://www.peace-aichi.com/objects/
*「苟も」「竊に」「擅に」は、「いやしくも」「ひそかに」「ほしいままに」と読みます。