◆所蔵品から◆資料ナンバー8420 「戦争美術展画集」の話
資料班


 
表紙

戦争美術展画集 表紙

 今年(2015年)の夏は、戦後70年ということで、いろいろな所で戦争に関連する展示会が行われていました。
 先日、名古屋市美術館の「画家たちと戦争:彼らはいかにして生き抜いたのか」を見てきました。(すでに終了 2015年9月23日まで)
 戦争中の絵は塗りがあっさりしてるなあ、絵の具も不足したのかなあ、と思ったり、戦争前の絵、つまり70年以上前の絵でも、古く見えないものがあるということに驚いたりしました。(風化や色褪せをあまり感じなかったという意味と、テーマや技法が古くさく感じなかったという意味と、両方で。)

 「戦争中の絵画」といえば、最近寄贈された資料で、「戦争美術展画集 昭和十八年」というのがあります。表紙(→)の題字は、右から左に読んでください。昔の漢字が使われています。「爭」→「争」、「畫」→「画」 です。
 目次によると、大東亜戦争美術展・大日本海洋美術展・航空美術展・決戦美術展の4つの展覧会の作品が載っています。
 発行は朝日新聞社。昭和19年(1944年)1月発行です。


手紙
表紙

戦争美術展画集 6・7ページ

 中身を見てみます。表紙と、最初の絵のページを除いてすべて黒1色で印刷されています。画集なのに。
 右のページには海での戦闘の絵が2点。まんがかゲームか特撮映画か、というような派手な画面です。
 左右両ページとも、下の絵は、ニューギニアでの戦闘を描いています。折り重なるようにたくさんの兵士が描かれています。
 左上は「提督の最期」とキャプションがあります。調べてみました。画面中央でひときわ白く光る顔の人が「提督」だそうです。ミッドウェー海戦で戦死しています。


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戦争美術展画集 8・9ページより

 日本画を集めてみました。
 白い花みたいに描かれている落下傘とか、浮世絵みたいな波とか、背景の植物の感じとかが、日本画っぽいのではないかと思います。
 落下傘の絵のタイトルは「神兵「メナド」に降る」。落下傘兵を「神兵」と表現しています。

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戦争美術展画集 29ページ(左) 43ページ(右)

 女性の多いページを並べてみました。右上は「貯蓄報国」。銀行の窓口で働く人たちが描かれています。
 その下には祈る女性の絵が並んでいます。
 いちばん左の列の上の絵は白い服と濃い色の服の女性が描かれています。黒っぽい服は赤十字の制服のようです。十字のついた腕章をして、襟元と胸にも十字の入った記章をつけています。
 その隣の列の一番下の絵の題は「のだて慰問」。日傘の下で、和服の女性が白い服の男性たち(傷痍軍人でしょうか)にお茶をふるまっています。


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戦争美術展画集 51ページ

 こちらは男子ばっかり。「彫塑」のコーナーです。
 裸の女性の像がひとつもない!というのは、ものすごく今と違うところだと思います。


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戦争美術展画集 30ページより

 裸の女性の彫刻がなければ、花の絵なんかもやっぱりない。だいたい、静物画ってあるのか? と、調べてひとつだけ見つけました。こちら。「装具(被服其他の静物)」です。


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戦争美術展画集 59ページ

 最後に、ポスターをご覧いただきます。文字が読みにくいものがあるので、文字の部分を書き出します。
(右の列 上から)
・ 一刻も早く!/戦闘配置につけ
・ ここも戦場だ
・ 前線へ弾丸を送れ/兵器生産にも敵に敗けるな 前線銃後は一体となつて 大東亜戦完遂へ

(左の列 上から)
・ 征け!/学徒よ大空へ
・ このハンドルを握れ/理屈は抜きだ 1億戦闘配置につけ
・ みたみわれ この大みいくさに/勝ちぬかん



詳しい画像はこちらからどうぞ
http://www.peace-aichi.com/20150921_sensougashuu.pdf
ピースあいちウェブサイトの「所蔵品の紹介」ページからは、バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/05_objects.html