◆所蔵品から◆資料ナンバー1396その他 雑誌「模型航空」 の話 資料班 



 
「模型航空」

「模型航空」1942年8月号表紙

 模型飛行機の雑誌です。発行は、毎日新聞社。1942年8月号だけは、東京日日新聞社/大阪毎日新聞社と、二つの名前があります。
 毎号、表紙は新しい型の模型飛行機で、それぞれ、
 「高性能滑空機ウルヂヌス」(1942年8月) 「無尾翼レーンケンペ型 発表」(1943年5月) 「アデナウの鴨型滑空機 発表」(1943年7月) 「毎日D-1型 発表」(1944年3月)
と、説明があります。
 1943年5月号からは、、本のサイズが小さくなっています。おおざっぱに言うと、A4サイズからB5サイズに変わっています。1943年5月号の編集後記に、「雑誌用紙の節約令のため、本誌も型を小さくすることになったが…」という内容のことが書いてあって、戦争中の物資の不足はこういうところにも出てくるのだな、と思いました。

「模型航空」

「模型航空」1944年3月号編集後記

 編集後記つながりでもうひとつ、ふたつ。
 1944年3月号の編集後記には、「飛行家」には「荒縄のような図太い神経」と、「針先のような鋭い感覚」が必要で、「荒縄」のほうはともかく、感覚を鋭くする仕事は「模型航空の持つ重大な任務」であると書いてあります。「実物機と最も縁が遠いように思われ、一部の人々から盆栽いじりと悪罵されている室内機の研究、これが飛行家的感覚の醸成に最も有効であるという一学鷲の証言は、最も味わうべきである。」
 模型作りも、飛行家にとっての大切な訓練になり得る、ということのようです。

 1942年8月号の編集後記は、こんな感じ。
 「このごろ「日本型模型」なる合言葉で、暗に諸外国の模型航空を一切排斥しようとするものが現われている。日本の模型が日本的でなければならないことは当然であるが、現在では極めて貧弱な日本的なものしかないのだから、それは一つの希望ないし目標であるに止まり、諸外国の経験と成果を吸収検討することが今日の日本的模型航空建設の主な活動である。」

「模型航空」

「模型航空」1944年3月号表紙・裏表紙

 1942年の時点では、模型飛行機は外国から学ぶべきことが多かったようです。飛行機の名前も片仮名だし。
 1944年(終戦の1年前)の表紙の飛行機は、「毎日D-1型」と、アルファベットは付いていても、日本っぽい名前になっています。この号の表紙には「撃ちてし止まむ 模型は兵器だ」という標語のようなものが入っています。

「模型航空」

「模型航空」1943年7月号表紙・裏表紙

 1942年8月号と、1943年7月号には、「敵機を検討する」「これが敵機だ!」というページがあります。
 1943年7月号の編集後記には、(敵機の模型を)「大いに自作して防空関係者に見せてあげるなり、寄贈するなりして欲しい。これも重要な日本模型飛行家の任務である。」という文章があって、飛行機模型も戦争協力、というのが伝わってきます。

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「模型航空」1942年8月号「敵機を検討する」 「模型航空」1943年7月号「これが敵機だ!」

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「模型航空」写真(グラフ)ページ
上から、1942年8月号・1943年5月号・1943年7月号・1944年3月号

 各号には、写真のページがあって、いろいろな種類の模型飛行機を紹介していたり、飛ばしている時の様子が分かる写真があったりします。

「模型航空」

「模型航空」1943年7月号
「ガソリン機の調整と試験飛行」
チャールズ・ハムプスン・グラント
山本武男訳

 文章もイラストもチャーミングな記事があったので、ちょっとご紹介したいと思います。1943年7月号の巻頭記事、「ガソリン機の調整と試験飛行」 チャールズ・ハムプスン・グラント
 「本誌編集部が特殊ルートより入手した敵米国の“モデル・ヱアプレーン・ニュース”誌の(1942年版)昨年六月号所載の記事の訳文である。」
 模型飛行機でも、ガソリンのエンジンを積んで飛ぶけっこう本格的なものの記事です。表題を拾ってみると、
1飛行を急いではならぬ 2完成機を再検討する 3翼の狂いを直しておく 4発動機の調整方法 5試運転はこうしてする 6試験飛行の順序 7安全第一“魚釣り飛行”
 右の図は、「魚釣り飛行」の図です。自由飛行の前に、25メートルくらいの紐をつけて、飛ばしている図です。
 下の方は、文章の最後。「しかし、最後にもう一つ、最も重大なことを忘れてはならない。といふのは、自由飛行をさせる時には必ずセルフ・タイマーをかけることである。とはいふものの、初めての人はこの時の大きな感動のためにしばしばセルフ・タイマーをかけることを忘れて出発させるものである。その時はどうするか?いや、この問題が最もむづかしいやうである。仕方がない、気がついたら直ちに走れ! 野を越え、山を越え、何所までも、走れ! 走れ!」
 自分で作った飛行機を飛ばす時のわくわくした感じが出ていて、いいなと思いました。


詳しい画像はこちらからどうぞ。「ガソリン機の調整と試験飛行」も読めます。
http://peace-aichi.com/20131024_mokeikoukuu.pdf

ピースあいちウェブサイトの、所蔵品の紹介のページからは、「所蔵品から」バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/05_objects.html

「模型航空」

「模型航空」1943年5月号表紙・裏表紙