◆所蔵品から◆資料ナンバー850・1213・1593 婦人倶楽部 「令嬢画報」と手紙のお手本の話 資料班 



 
雑誌表紙

婦人倶楽部 1939年9月号(左上)・1940年1月号(右上)・1942年1月号(左下)

 今回は、講談社の女性向け雑誌「婦人倶楽部」からご紹介します。
昭和14年(1939)9月号・15年(1940)1月号・17年(1942)1月号を見ていきます。
 昭和14年9月号・昭和15年1月号からは、巻頭「絢爛たる口絵画報」の中の、「令嬢画報」。
 もうひとつ、17年1月号の特集「婦人かな文字と手紙用語手本」も、ご覧いただこうと思います。

 「令嬢画報」は、4ページで4人のお嬢様が写真入りで紹介されています。 月ごとにテーマがあるようで、昭和14年9月号は「朝の日課」昭和15年1月号は「つつましく」とタイトルが付いています。「令嬢画報」の向かい側のページは、広告のページ、という構成になっています。化粧品の広告が多いようです。
(名前は伏せ字にしました。文章は部分的に抜き出して載せています。漢字や仮名遣いは変えています。)

雑誌 写真ページ

婦人倶楽部 令嬢画報 1939年9月号

 昭和14年9月号「朝の日課」
 弁護士****氏令嬢***様
 ***様はお部屋のお掃除に甲斐甲斐しく働いておいででした。つい最近までお姉さまの御一家に交じって北京に行っていられましたとか。
 「あちらで兵隊さんのいろいろな御苦労を眼の当りに見て来ますと、帰ってからもジッとしていてはすまないと思います」

雑誌 写真ページ

婦人倶楽部 令嬢画報 1939年9月号

 子爵****氏令嬢**様
 床の間や応接間に花を活けてお飾りなさるのが毎日のご日課という**様―
 「手作りの秋草や実物(みもの)など、思いのままに切り取って活けることは本当に楽しみです」

雑誌 写真ページ

婦人倶楽部 令嬢画報 1939年9月号

 陸軍軍医少将****氏令嬢**様
 **様の朝の御日課は箒を取ることから始められ、お勝手のお仕事までなさいますとか―。

雑誌 写真ページ

婦人倶楽部 令嬢画報 1939年9月号

 **耳鼻医院長****氏令嬢***様
 朝早くからお父様と御一緒に、朝顔のお手入れに一生懸命の***様―。それがすむとお好きな絽刺(ろざし)や刺繍に厳しい暑さもお忘れとか。「母の紙入れやお草履などもみんな私が作りますの」と、にっこり―。

雑誌 写真ページ

婦人倶楽部 令嬢画報 1940年1月号

 昭和15年1月号「つつましく」
 実業家故****氏令嬢***様
 女学校時代に着古した制服を仕立直して新しい工夫の下に虔(つつ)ましい春の普段着を用意されています。

雑誌 写真ページ

婦人倶楽部 令嬢画報 1940年1月号

 実業家****氏令嬢***様
 銃後を守る婦人のつとめとして清らかな乙女の手につくられる慰問袋ほど遠い戦地の人々に暖かい心からなる慰めとなるものもありますまい。
 このごろは朝の日課のように心をこめた品々を整えられておられます。

雑誌 写真ページ

婦人倶楽部 令嬢画報 1940年1月号

 実業家****氏令嬢**様
 目白、鶯(うぐいす)、カナリヤ、それから小さな籠に仲よい二匹の十姉妹(じゅうしまつ)もいます。**様は小禽(ことり)好きのお父様のお手伝で毎朝小禽のお世話でお忙しいのです。

雑誌 写真ページ

婦人倶楽部 令嬢画報 1940年1月号

 医学博士*****氏令嬢**様
 麗(うらら)かな朝の日の輝く窓べに、もう早くから縫物のお仕事にお忙しい**様― 春着をお縫いになっていらっしゃるのでしょうか。いいえ、それは春着とはいえ、古い繕いものでした。質素な美しさこそ尊いものに思われます。

筆文字お手本

婦人倶楽部1942年1月号 婦人かな文字と手紙用語手本

 昭和17年(1942)新年号の特集「婦人かな文字と手紙用語手本」から。お手本は高塚竹堂。筆で書く、続け文字です。
「御礼かたがた」とか、「お変りもなく」とか「新緑の候」「末筆ながら」などの、クラシックなお手紙用語にまじって、いかにも戦争中、のフレーズがけっこうあったのです。まとめてご紹介します。

筆文字お手本

婦人倶楽部1942年1月号 婦人かな文字と手紙用語手本
慰問袋など/お国のために/お手柄を/軍務にお励み/御帰還遊ばし/御出征のよし/御入営遊ばし/御奮戦のよし/御奉公のまこと/銃後の御奉公


筆文字お手本

婦人倶楽部1942年1月号 婦人かな文字と手紙用語手本
出征兵士/戦時下では/第一線の将兵/大陸の野に/隣組の仕事も/万歳を唱へ/武運の長久/満州の野に/名誉の応召

 お手本の特集の前文にはこんな文章があります。
 「ここ数年来、日本に帰れ、日本精神に戻れという運動が、あらゆる方面に行われております。……ことに、優雅というか、淑やかさを尊ぶ日本婦人にとって、お習字は最も手近な修養であると思います。……」

 ピースあいちの資料にも、戦争中の手紙があります。筆で描かれた手紙を見て、、(兵士が書いた遺書なんか、長い巻き紙の物もあります。)昔の人はすごいなあ、と思っていたのです。
 このお手本の前文を読んで、文字を筆で書く、という日本の文化を大切にして誇りに思うことも、「お国のために」というような気持ちの支えになっていたのだろう、と思いました。
 もうひとつ、「お手本」は、「どうやってきれいな文字を書くか」という形のところと、「どういう事を手紙に書くのか」という内容のところと、両方の面があるのだと思いました。

 

詳しい画像はこちらからどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/20130322_reijou.pdf

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http://www.peace-aichi.com/05_objects.html