所蔵品から● 資料ナンバー5575 「紋帳」の話 資料班
紋帳
「増補 伊呂波引紋帳」という、
家紋や刺しゅうの図案が載っている、小冊子です。
小冊子というには分厚い。背表紙のところで測って2.7センチあります。
戦時中の物ではないかもしれません。もっと昔かも。中身は手書きではなくて印刷です。
紋の名称などの文字は、活字ではなくて、筆書き風の続け字です。
表紙・背表紙・裏表紙と最後の方のページは失われています。和紙に筆書きで「紋帳」と書いたものを代わりの表紙にしています。和綴じ、というのでしょうか、背表紙のところ3か所に穴をあけて、たこ糸のような太い糸で縫うように縛って、紙を束ねています。
糸で綴じる式の本なら、背表紙は要らないのですが、本の背の部分にはがれかけた紙が残っているので、もともとは背表紙のある(洋風綴じ?の)本だったようです。
なでしことナスの紋のページ(部分)
家紋というと、黒白2色で塗り分けられているイメージですが、この「紋帳」の図案は、線で描かれています。輪郭だけ。後の方のページに刺しゅうや刺し子の図案も載っているので、線だけの紋も、刺しゅう用の図案ではないかと思われます。
「伊呂波」の名のとおりに、いろは順で紋が並んでいます。たとえば、なでしこの次は野菜のナスが来て、そのあとに蘭、梅と続きます。梅は、「うめ」でなくて「むめ」と書かれていて、なでしこ→なすび→らん→むめ、と、並ぶのです。
源氏香のページ 桐壺・夕顔・紅葉賀
紋リスト、刺しゅう図案、その後は「源氏香之図」、最後に「伊呂波寄名頭字儘」が載っています。
源氏香の説明をします。
お香をたいて、香りを確かめます。5回します。そのあとでお香の種類を当てるのですが、1番目は何、次は何、という方式ではなくて、全部同じだった、とか、全部違うのだった、とか、何番目と何番目が同じで、あとはバラバラだった、とか、そういう当て方をします。
右の画像の上の方の図形がお香の組み合わせを表わしています。短冊が5本あって、上の方がつながっていたり離れていたり。つながっているのは、同じ種類のお香が使われたことを表わしています。ヒマがあって数学が嫌いでない方は数えてみてくださってもいいですけど、組み合わせは50通りぐらいあります。源氏物語の章(帖)の数も同じぐらいあります。で、組み合わせひとつひとつに源氏物語の章(帖)の名前が付いているのです。
角字 何という字でしょうか?
「伊呂波寄名頭字儘」には、(音読みのいろは順で)漢字の色々な字体が載っています。(行書・楷書・篆書・隷書・角字)名前を刺しゅうすることもあるので、文字も刺しゅう図案の一種ということなのでしょう。
角字というのは、正方形の枠に収まるように、長方形を使って漢字を書いたような。右の図を見てください。
ちょっとクイズ。それぞれどんな字の角字でしょうか。
いきなり答えです。右列は「國」(国の昔の字)と「能」。真ん中の二つは「登」と「埜」。ここまではまだ、わりと原形に近いと思うのですが、左の二つは、ぱっと見てもよくわからない。じつは「久」と「九」なのです。画数の少ない漢字は、線をかくかくと曲げてスペースを埋めているのです。
詳しい画像はこちら。紋と角字がもう少したくさん見られます。
http://www.peace-aichi.com/20111025_monchou1.pdf
ピースあいちホームページの「所蔵品の紹介」ページもごらんください。
バックナンバーの関連画像もあります。
http://www.peace-aichi.com/05_objects.html
おまけ 2012年の干支にちなんで、龍の紋です。
右上から、龍の丸・二つ雨龍・龍三つうろこ・ちがい龍のつの