所蔵品から● 資料ナンバー6232・5725・6001 手榴弾消火器と消火弾の話 資料班
今回のは、ピースあいち2階に展示中の資料です。ビデオコーナーのすぐ横の展示台に赤い木の箱があります。その隣のケースの中には透明な液体の入ったガラス瓶と、その瓶が入っていた紙箱が展示してあります。展示室の出口近くの「町屋コーナー」の畳の上にも、箱に入ったままですが、同じ瓶が置いてあります。
資料班しか見る機会がないような、収蔵庫に眠っている資料を紹介するのが本当はいいのかもしれません。でもまあ、展示で置いてある物でも裏側や内側まではなかなか見られないので、取り上げる意味もあるかも、と思いました。
赤い木の箱は、縦長で、前部の板が外れるようになっています。向かって右の端が回転軸になって、扉のように開く作りになっていたようです。その、ふたというか扉というか、の部分には「手榴弾消火器」「GRENADE」と文字が入っています。字の所は刃物で彫ってあって、その上というか中を銀色の塗料で塗ってあります。
中は3段に仕切られています。ピースあいちの資料には、箱の中身はありません。説明書だけあります。こんな内容です。(元の文はぜんぶ片仮名ですが、平仮名にしました。漢字も今使っているものに変えました。)
◎本剤は人畜に絶対無害にして氷結腐食爆発等の憂なく且つ薬品が器物に触るるも何等損傷を及さず
電火、セルロイド、フヰルム、油類等にて水を以て消火に困難とするもの…(紙が欠けていて読めない部分があります)…対し最も効力あり
一個の玉は六丈内外の間が猛火に包まれたのに適する量であります
大きな屋内に対しては其の割合の個数に以て効を顕します
屋外の消火には必ず五倍以上の(バケツ又軽便ポンプ等に)水に混入して火元へ振りかけて下さい火気あるも再び燃上りません
「六丈」は、1丈=10尺=3.03mなので、18.18mです。丈でなくて畳、六畳の部屋(間)という意味のような気もします。
箱の大きさは、ピースあいちの所蔵資料データベースによると、奥行・幅・高さの順で、137×137×420(mm)。縦3つに区切られているので、ひとつずつの区画は、立方体に近い形になります。そこに、「玉」が1個ずつ入っていたようです。球状の容器に液体が入っているのを手榴弾のように火元に投げつけて消火をしたようです。展示の解説にも書いてありますが、「grenade」は英語で手榴弾の事です。「hand grenade」ともいいます。
ガラス瓶のものが「消火弾」です。薬局で売ってる500mlの消毒用アルコールの瓶ぐらいの大きさです。ガラスのアンプル瓶の中に透明の液体が入っています。これも、火に向かって投げたり、(容器が壊れて不燃性のガスが発生し、火を止めるのだそうです。)中の液体を水で薄めてかけたりして使います。現在でもプラスチック容器の「消火弾」は使われています。
紙の外箱には手榴弾消火器の箱の中の説明書と同じような説明書きがあります。先程の説明書と重なる所も多いのですが、最後に載せますので興味のある方は読んでください。なぜかこちらは平仮名が使われています。
「消火弾」の箱の説明
(正面)
竹村式強力消火器 /備へあれば憂なし /戸毎に備へて防火に努めませう /中部防火協会
(向かって右面)
本器の特色
屋内の初期消火に対し消火効力偉大なる事
アンプール式なる為め薬液効力永久不変なる事
取扱ひ簡単にして女子供にも容易に使える事
薬液は人畜に絶対無害なる事
他の消火器に比し値段が非常に安い事
(向かって左面)
使用法
スワ火事と云う場合この弾を火中なるべく上部の固き箇所をめがけて投げて下さい。
弾が破れて中の薬液が火にかゝると強烈な不燃性瓦斯体となつて消火作用を営みます。
投弾に都合の悪い場合は水約二、三舛に本弾壹個の薬液を混入して掛けて下さい。
火気に危険、または見易き場所に備へつけて下さい。
(後面)
近来本品の盛名に倣ひ類似品がありますから特に竹村式と御指示を願ひます
定価 \.250.000
(瓶のラベル)
竹村式強力消火弾 /各種警察書消防団効力証明済 /中部防火協会